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「あきない正傳金と銀(9)」

あきない正傳金と銀9

「あきない正傳金と銀(9)」
高田 郁
角川春樹事務所

 生み出した新しい新しい小紋染めで一層の飛躍を期した五鈴屋江戸本店。しかしその斬新な型紙を幸の妹:結に持ち去られてしまう。商売敵となった結と音羽屋により五鈴屋はさらなる危機が訪れる。店の女主人として次々と押し寄せる危機にも知恵を絞って乗り越えていく幸の物語、今回も読みごたえがありました。

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「アルルカンと道化師」

アルルカンと道化師

「アルルカンと道化師」
池井戸潤
講談社

 東京中央銀行を舞台にした人気の半沢直樹シリーズ最新作。
今回の半沢は大阪西支店の融資課長、そこを舞台にした取引先で歴史ある美術系出版社である仙波工藝社のM&A(企業買収)話です。銀行の論理で強引にM&Aを進めようとする支店の上司や大阪営業本部、それから業務統括部長に対し、買収から会社を守ろうとする半沢達融資課チームの奮闘。今回は美術品を絡めたおはなしで、理不尽な圧力に屈せず顧客を守り正義を貫くいつもながらの痛快なストーリー、一気読みでした。

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「よろこびの歌」

よろこびの歌

「よろこびの歌」
宮下奈都
実業の日本社

 名バイオリニストを母に持つ御木元玲は声楽で目指していた音楽大学の付属高校に入学できず、数年前に新設された女子高校に進学する。周囲との関わりをもたず高校生活を送ってきたが、2年となりクラス替え、そして秋、玲はクラス対抗の校内合唱コンクールの指揮者に指名されてしまう。コンクールは決してうまくいったわけではないが、これを機に玲のまわりが動き出す。

主人公が章ごとに変わり、クラスメートそれぞれが抱えているものがあり、それぞれがこの合唱を機に関わりをもちはじめ、音楽を通してつながっていくおはなし。いいおはなしでした。

「遥かに届くきみの聲」

遥かに届くきみの聲「遥かに届くきみの聲」
大橋崇行
双葉文庫

 かつて天才子役と言われていたが今は声を失っている小宮透は、自宅を離れ一人暮らしで高校生活をはじめる。その学校には朗読部が存在し、声のでない透を熱心に入部をすすめる同級生の遥(はるか)が・・・・。朗読の世界から遠ざかろうとしていた透が、またその世界に惹き込まれていくおもしろいおはなしでした。
作品を掘り下げて読み、朗読に青春を燃やす高校生たちの姿が印象的です。自身をふり返ると高校生の頃の読書は「ただ読むだけだったなぁ」と。こんなふうに作品を味わい掘り下げる小説がでてくる背景には、読み聞かせボランティアやビブリオバトルのような取り組みがあるのかな。今の高校生は「大人の読者」なんだなと思ってしまいました。

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「ごきげんな毎日」

ごきげんな毎日「ごきげんな毎日」
いとうみく作
佐藤真紀子絵

 いとうみく作品「朔と新」をの著者プロフィールで、この作者が児童文学作家であることをはじめて知りました。というわけではじめてこの作者の児童文学作品に挑戦。
両親・姉・僕の4人家族、家を新築して引っ越し子どもたちも自分の部屋をもった矢先、一人暮らしをしていたおばあちゃんが「そっちでやっかいになりたい」と。やってきて同居をはじめたおばあちゃんは予想外に元気で活動的。年寄りとの同居・介護が重くのしかかってくる作品と思いきや、意外な展開をしてたのしませてくれます。

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「ぼくらはみんな生きている」

ぼくらはみんな生きている

「ぼくらはみんな生きている」
坪倉優介
幻冬舎

 スクーターでトラックに激突し意識不明の重体におちいった大学生、のち奇跡的に目覚めたが重い記憶喪失をかかえた大学生の生活を綴ったノンフィクション。家族もわからず、夜は休むという生活の知識さえももなくしてしまった彼が、子どもが成長するように改めて人間生活をひとつひとつ学びなおしてゆく。美術系の大学、留年もするがやがては卒業、そして染め物職人としての道を生きはじめる。
彼の生活とこころの記録の間にはお母さんの記憶も挿入され、主人公の成長を見守る親の強さ、そして成長を一緒に喜んでいく姿も印象的です。

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「朔と新」

朔と新

「朔と新」
いとう みく
講談社

 「車夫」シリーズで好印象のいとうみく作品を、と手にしました。
朔(さく)と新(あき)は3つ違いの兄弟、2年前にバスの事故で兄:朔は失明してしまい寄宿舎つきの盲学校に転校、そして卒業し新たち家族の下に帰ってくる。そしてブラインドマラソンに挑戦するため弟:新をパートナーに頼んでくる。事故で失明した朔だけでなく、新や母:加子もそれによって心に傷を負い引きずっているが、ブラインドマラソンを続けながら複雑に絡まっていた糸が少しずつ解けていくようなおはなし。
話の途中には「車夫」の主人公:吉瀬走もさりげなく登場し、前作の愛読者ならこのお話にも一層親近感を覚えてしまいます。

「ひとごろし」

ひとごろし「ひとごろし」
山本周五郎
文藝春秋

 表題作他「へちまの木」・「あとのない仮名」・「枡落とし」の短編4作品を収録。
「ひとごろし」は自他ともに臆病者と認める武士:六兵衛が主人公。藩のお抱え武芸者が家中の者を斬って出奔し、その者を討つようにと藩公から上意討ちを命じられる。六兵衛は無謀にもその討手に名乗りを揚げ旅に出る。自身の弱さを知る者の強さ、正々堂々と戦いを挑むなんてことは全く考えず、恥も外聞もなく武芸者を心理的に追い詰めていくおはなし。微笑ましく読めました。

「金足農業 燃ゆ」

金足農業燃ゆ

「金足農業 燃ゆ」
中村 計
文藝春秋

 2019年、夏の甲子園で旋風を起こし決勝まで勝ち進んだ秋田:金足農業高校の野球部の姿を、後にプロ入りしたピッチャー:吉田輝星の子どもの頃から、彼を中心に描いていく。秋田県の高校球界では決して野球エリートとは言えない金足農業のバンカラさややんちゃさを残した野球部員達。エリート争奪戦を繰り広げている高校野球界において雑草集団が甲子園でのびのびと成長していく。こんなチーム、私も応援したくなってしまいます。

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「いのちの停車場」

いのちの停車場

「いのちの停車場」
南 杏子
幻冬舎

 東京の医科大学病院で救命救急医として働いていた白石咲和子62歳が郷里:金沢で「まほろば診療所」の訪問診療医に転身する。目の回るような医療現場から一日わずか数件の訪問診療へ、しかし忙しく目の前の命を救うことだけに追われた医療からはゆったりとした現場だと思った訪問医療には個々にそれぞれ病気以外の問題も抱えた患者や家族と向き合う必要に迫られる。しかもその多くは終末期医療。それでも新しい患者に向き合いていねいに寄り添っていく主人公とスタッフの仕事ぶりは温かく、私たちの終末期もこんな訪問診療をしてもらえたらいいなと思ってしまいます。脳神経内科医であった老いた父とのつかの間の二人暮らしも、やがては骨折・入院そして次々と併発する症状で終末期に向かって駆け下るような父を、医者でありながら自身も在宅で支える家族となっていきます。
これもお薦めの一冊。