月別アーカイブ: 2016年8月

海の見える理髪店

海の見える理髪店1
海の見える理髪店2

海の見える理髪店
荻原 浩
集英社

本年度の直木賞受賞作です。

海辺の小さな町、駅からバスで数箇所目のバス停で降りて徒歩で数分、そんなところにある理髪店がネット上で評判になっている。主人公の若者が客としてこのお店を訪れる。客の前にある大きな鏡を通して海原が見えるらしい。その理髪台に座ると店の主人が若者に話しかける。その話がこの物語そのもの、そして最後には店主と若者の関係、若者がなぜこの理髪店にきたのかが明かされる。
わずか40ページの短編ですが濃いおはなしでした。それから中表紙もいいなと思いましたので並べてみました。

他5編の短編集。いずれも家族をテーマにした作品で、心模様がリアルです。

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「今月の一曲」、更新しました(8月16日)

8月の「今月の一曲」は「山の乙女」。月前半は梨大・混声合唱でお聴きいただきましたが、今度は男声合唱です。わたしにとって「山の乙女」のスタンダードは男声合唱です。

山形南高OB合唱団はじめての東京公演での演奏、1955年ですからもちろんモノラル録音ですが、ゆったりと聴かせる男声ハーモニー、いいと思うんですよね。

「今月の一曲」
http://susuki.chips.jp/?page_id=5915

「代筆屋」

代筆屋代筆屋
辻 仁成
海竜社

図書館で手にして読んでみることにしました。そういえば「代書屋」という落語がありましたっけ。でもこちらは笑い飛ばすようなものではなく、「手紙の力」というようなものを感じさせてくれる内容です。

一作目、バイト先に客で来る女性に思いを伝える手紙を代筆、その後女性側からの返信の代筆。双方から代筆を頼まれてしまうなんておもしろいストーリーです。代筆で成就したカップル、「代筆がばれたらどうなってしまうんだろう」なんて余計なことを考えてしまいます。こんなさわりを書くと誤解を受けるかもしれませんが、決しておもしろおかしい内容ではありません。代筆のためには十分に聞き取りをして、依頼主の心に沿って代筆をする、これは大変なことなのだなと思います。しかもそれが受取人の心をうつ手紙、すごいですね。

どこまでが現実でどこからが創作なのかは全くわかりませんが各章のおはなしと手紙、いいですね。あとがきには著者にこの本の依頼が手書きの手紙でされたことが紹介されています。「やはりどうしても今という時代に手紙に纏わる本が必要な気がします」との再度の依頼文、若い編集者の情熱のこもった手紙が著者の心を動かしこの本が生まれたのだそうです。

もうひとつの「梨大合唱団OB・OG会」

私達よりも5年ほど若い学年が中心となって行っているOB・OG会の案内をいただき参加してきました。こちらは全くの唱う会、会場は甲府市のあるショッピングセンター脇の学習塾の教室です。学生時代の練習室をとろうとしたけれども、大学のオープンキャンパスのため利用できなかったとのことです。

集まったのは女性10名・男声16名、計26名。それから佐々木先生の奥様と二人のお嬢様。OBとしては何と私が最年長(笑)、そして国分寺のメンバーのHさんとその同級生で40年ぶりの再会となるSさん、昨年まで一緒に唱っていたSさんもしばらくぶりの再会でした。私のなじみのある方はここまで、年代の違いを感じさせられる私達から見たら若い世代の会でした。

事前に、楽譜は讃美歌と緑(青)の本を持ってくるようにとのこと。緑(青)の本とはのばら社の「混声合唱名曲選」のこと。でも讃美歌も愛唱歌もこの会の主要メンバーがコピーを作ってきてくれました。一人は拡大コピーで、もう一人は縮小コピーで。縮小コピーしてきた方、「おまえな、メンバーの歳を考えろ。縮小コピーなんてとんでもない。」とお叱りを受けたそうです。でもこうして何人もの人がこの会を楽しみに楽譜を用意してくるなんていいですよね。それからソフトドリンクが用意されていたり各地からの甘味の土産が並んだり、それぞれの心遣いがうれしいな。

OB会1
OB会2

 
午後2時、会が始まりました。6月のOB・OG会にも見えたKさんのリードで、用意された電子ピアノをつかってまずは分離唱。それから讃美歌310番しずけきいのりの。唱い始めると久しぶりのその響き、感激です。「あ~、梨大の合唱だ~!」と。次々と讃美歌を十数曲それから山田耕筰や愛唱歌等々、途中休憩を挟んで2時間ほどがあっという間でした。

4時をすぎた頃、集まったメンバーそれぞれのちょっとしたスピーチ、学年ごとにまとまって前に出て話します。我々のOB会でもいつも時間を費やしてしまうスピーチ、こうするとちょっと効率的で一工夫ですね。一番年上の私がトップバッター、そして3学年下が2人、多い学年は5人ほどが並びました。そして一番最後は1年時にだけ佐々木先生の指導を受けた最後の学年まで。こうして集まってくるって言うのは、1年間だけでも佐々木先生の合唱が印象深かったんですね。何十年ぶりかで唱ったSさん、「楽譜を見てこれは知らない曲歌ったことのない曲と思うんですけどね、唱い始めると自分でも唱えてしまう。不思議な感覚です。」なんて言葉が印象的でした。先生の奥様とお嬢様にもお話しいただいた後残り20分ほど、また唱い始めました。久しぶりに唱った学生歌、それから唱い残した讃美歌などなど。

会場の時間制限もあり予定通りに5時で終了。次回の話もありました。団内カップルも何組かおり県外の方でも奥さんは山梨出身の方が多いとか。この会はそういう人たちが集まって唱えるお盆の時期に始まったのだそうです。お盆の時でなければ参加できないという人とお盆の時では参加できないという人がおり、今では一年ごとにお盆の時期とそれを一週間ほどずらした時期と、かわるがわるに開催することになっているのだそうです。今年はずらした年、そして来年はお盆と時の順番になるとのこと。来年は出られるかな~?

OB会3

多くの方はこのあと懇親会に向かったのですが、私はそちらはパス。40年ぶりのSさんも懇親会不参加とのことでしたので、せっかくの機会と二人で食事をしてゆっくりと話す時間をもてました。嬉しい一日、声をかけていただいた方達に感謝です。

一路 (上・下)

一路一路 (上・下)
浅田次郎
中公文庫

これもテレビドラマを観て読みたくなった作品です。

西美濃・田名部郡の小野寺家は代々主家の参勤交代を取り仕切る家柄。江戸で成長した小野寺一路は父の急死で田名部に呼び戻され、すぐに出立する参勤交代を仕切ることに。引き継ぎなどないはじめての仕事に、はるか祖先が残した行軍録だけをたよりに古式の参勤交代をすすめる。お殿様を陥れようとする重臣も同道する中、いくつもの苦難を乗り越えて江戸まで。そんなストーリーです。

今までスポットライトを浴びることのなかった参勤交代を題材として作品を仕上げるのには膨大な量の資料を読みあさったのでしょうね。作家さんのそういう熱意、感心するばかり。参勤交代といえば東海道、そして川渡しを思い浮かべます。そのやっかいな川渡しを避けて中山道を使った大名も多かったとか、二大名が同じところに投宿するときの上下関係とか、「そうなんだ」と知らなかったこと満載です。でもストーリーがちょっと短絡的なところがあったり、馬の会話などおちゃらけがあったり、都知事選ではないけれど「後出しジャンケン」という言葉を思わせるようなところも・・・・。読後の満足感は残念ながらイマイチ、かな。

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「今月の一曲」、更新しました。(8月)

8月になりましたので、「今月の一曲」を更新しました。

今月は「山の乙女」です。まずは混声合唱で。梨大1982年の演奏です。私自身は男声合唱で馴染んだ曲ですが、また違った味わいですね。8月後半は男声で聴いていただこうかなと思っています。

「今月の一曲」
http://susuki.chips.jp/?page_id=5915

藤沢周平 父の周辺

藤沢周平_父の周辺藤沢周平 父の周辺
遠藤展子
文藝春秋

 先日、テレビドラマ『ふつうが一番 〜作家・藤沢周平 父の一言〜』を見ました。おもしろいドラマで原作を読みたくなり、図書館で借りました。

内容は娘から見た父・藤沢周平といった感じのエッセイ。この作家の飾らない日常の姿が描かれています。ドラマはこの本の中のほんの一部、原作からアレンジしているところもみられました。佐藤B作が親戚の問題児(?)として登場しましたが、原作にはそれらしい人物は登場しなかったな。母が主人公の反抗に「出て行きなさい」、主人公の家出、・・・・の部分、父が母に向けたきつい言葉を祖母が最後に窘めるようなところ、原作にはありませんでした。エッセイは淡々と語られていますがドラマはさすがにドラマチックにアレンジされていますね。ドラマは父の直木賞受賞で終わっているのですが、原作はさらにさらに続きます。

藤沢周平は私にとって好きな作家の一人で、読みあさった時期もありました。時代物、特に地位も低く貧しいけれども腕は立つという江戸期の武士を描いた作品、印象深いですね。藤沢周平の郷里である山形:鶴岡を舞台にしていることが多いようです。代表作は私の中では「蝉しぐれ」かな。はじめて山形を訪れたとき、この作品を電車旅の友に持って行ったのも何かの因縁(ちょっと大げさかな)。江戸期の女性を多く登場させるのに、家族に「女性の名前をたくさん知りたいと言われ、電話帳で片っ端から女性の名前を書き出して渡した」なんていう裏話などなど興味深く読みました。

藤沢周平ファンならおすすめですよ。