音感教育の美しい調べ 再び東京で発表会

音感教育の美しい調べ
再び東京で発表会
声価上がる山南OB合唱団

“森の都”山形の合唱団が、都会では聞かれない美しい響きを認められ、ふたたび東京で公演する。
○・・・それは山形南高OB合唱団(委員長山形市七日町電器商調所昂治さん(28)団員25人)で、とくにわが国の“音感教育”の創始者佐々木基之(旧名幸徳)氏がタクトを振り、来月5日山形市中央公民館で市民に発表したのち、16日午後6時半から東京青山の日本青年館ホールのヒノキ舞台に立つことになっているが“音感教育”による秀れたハーモニーを地方で育てた合唱団として中央の楽壇から注目されている。
○・・・山形南高OB合唱団は26年4月同校教諭森山三郎氏の指導で第1、第2回卒業生の余目高教諭石沢行夫(25)山形市教委勤務安達良介(26)庄内交通社員砂山弘(25)ナショナル電器社員中村博(25)山形トヨタ自動車会社員田島義久(25)さんの5人によって創設された。団員は会社員、公務員、教員、粉屋、警察官、大学生などいろいろで、今日まで毎週水曜日の夜一回も欠かさない熱心な練習を続けてきた。

○・・・29年10月のある夜たまたま山形市を訪れた佐々木基之氏が、七日町大通りを合唱して通る一群のグループに話しかけたのがきっかけで、森山教諭を援助して同合唱団に直接音感教育を仕込むことになった。
○・・・その後同合唱団は30年7月山形市中央公民館開きの第1回公演や、同合唱団の創設に尽力した同市八日町の医師故東海林耕祐氏の追悼音楽会などで次第に市民の人気を得てきた。同年11月佐々木氏の所属する紫翠会から招かれて東京女子大、日本青年館で発表、圧倒的な好評を得た。その後当時のファンから第2回東京公演を熱望され、同校同窓会の援助でふたたび実現するもの。
○・・・2年の間に同合唱団の声価はさらに高まり、NHK交響楽団常任指揮者ロイブナー、声楽家ベッシュ夫妻は「東京公演には必ず招待してほしい」と佐々木氏に申し入れているほか、音楽評論家宮沢縦一氏は「東京には技術ばかりやかましくて、楽しくない合唱が多過ぎる。山南OBのような聞いていて響きの美しく楽しい合唱団は少ない」と手紙を寄せるなど各方面から期待されている。

○・・・佐々木氏の音感教育はいままで音符だけに頼った音感教育を改革して、耳を通じてハーモニーから自然に音楽のあり方をつかんで行こうとするもので、すでに札幌、仙台、広島、鹿児島、埼玉などでこのやり方が取り上げられているが、山南OBはその中でも代表的な合唱団であり、この教育を受けた団員の中にはピアノの即興演奏など秀れたセンスをもつものも少なくない。その意味で中央楽壇に投ずる影響は大きいといわれている。

 
【写真はステージ上の山南OB合唱団】

昭和32年10月17日
読売新聞山形読売面記事