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「あきない世傳 金と銀」

あきない世傳金と銀あきない世傳 金と銀
高田 郁
角川春樹事務所

今年テレビドラマ化もされた「みおつくし料理帖」でお馴染みの高田郁さんの新シリーズ、既に4冊が出版されていますが、図書館に希望を出したところ入れてくれましたのでまとめて読んでみました。

やはり時代小説で舞台は江戸期でしょうか。主人公の幸(さち)の父は武家で私塾で教える教養派、跡を継ぐ予定の優しい兄もいる幸せな家庭だったが、流行病で兄・父が相次いで逝き母・妹と別れて大阪の反物を扱う商家の女衆として働くことに。女衆は「一生鍋の底を磨いて終わる」と言われる中、商いの世界に才能をみせていく物語です。

女性でありながら男の仕事の世界で才能を開花させていく話は「みおつくし料理帖」とも共通するものがありますね。また、現在放送中の朝ドラにも重なるものがあるかな。

4冊を一気読みでした、シリーズはまだまだ続きそうです。2月、8月と順に出版されてきていますので5冊目は来年2月(?)、待ち遠しい。

「ビブリア古書堂の事件手帖7」

ビブリア古書堂7ビブリア古書堂の事件手帖7
~ 栞子さんと果てない舞台 ~
三上 延
メディアワークス文庫

しばらく遠ざかっているあいだにシリーズ7巻目が登場していました。今年2月に発売になっていたんですね。

シリーズのこれまでは太宰治の古書などを巡って話が進んできましたが、今回はシェークスピアが主役(?)。「人肉質入裁判(じんにくしちいれさいばん)」なんて古書が登場します。猟奇的なこわい雰囲気の書名、でもこれはシェークスピアの「ヴェニスの商人」のことでした。そういえばこの中では主人公の身体の肉何ポンドかが質草(?)になるんでしたね。それから話は発展してファースト・フォリオ(シェークスピアの戯曲を集めた最初の作品集、1623年出版)をめぐるストーリーに。今まで出番の少なかった栞子さんのお母さんも登場して親子対決の様相。と、まあこれくらいにしておきます。

今回でこのシリーズは一区切りなのだとか。でもまた続編も書けそうな余韻も残しています。

知人の息子さんが古書店をはじめたそうです。その方も「このシリーズを読んでいるのかな、現実の古書の業界のありようもこんななのかな。」なんていうことも考えながらのたのしい時間でした。

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「小説日本婦道記」

小説日本婦道記小説日本婦道記
山本周五郎
新潮文庫

周五郎3冊目。
日本の男には武士道とか○○道と数々の生き方の美学のような言葉があるけれど、女声にはそういう言葉が見あたらない。そこで「婦道」という言葉で日本の女性の美しい生き方の描くタイトルにしたとのこと。そんな著者の言葉通り江戸時代を舞台にした女性の物語の短編集です。短編ながらどの話もグッとくるものばかり、こういう話が揃うと短編集もいいなと思います。そして長編もまた読んでみたいな、と・・・・。

「不祥事」

不祥事

「不祥事」
池井戸 潤
実業之日本社

テレビドラマでお馴染みになった「花咲舞が・・・・」の原作本。実力派で跳ねっ返りの女子行員が銀行内の旧習や問題点に立ち向かっていく痛快ものの短編集です。

最近続編が出版されたようです、その名も「花咲舞が黙ってない」。ドラマ人気で原作の方が名前を変えてしまったようです。でも新作本は図書館では予約待ち、気長に待って読んでみようと思います。

「風が吹いたり、花が散ったり」

風が吹いたり「風が吹いたり、花が散ったり」
朝倉宏景
講談社

 亮磨は居酒屋チェーン店19歳のフリーター。ある日地下鉄のホームで不注意から白杖をもった若い女性を倒してしまう。助け起こしたこの女性に盲目マラソンの伴走を頼まれたことから、亮磨の生活に変化が始まる。
過去の過ちを引きずっている若者が視覚障害、発達障害を抱える友人、同僚との生活の中で徐々に前を向いて行く、読後は満たされる小説でした。

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「僕は上手にしゃべれない」

僕は上手にしゃべれない「僕は上手にしゃべれない」
椎野直弥
ポプラ社

 中学に入学した吃音症を抱える主人公、人前で話すことに恐怖感をもっていてホームルームでの初めての自己紹介も保健室へ逃げてしまう。「話すことが上手になれる」という誘いで放送部へ入部。優しい先輩、親身になってくれる同級生、家族、先生といろいろな人の温かさの中で抱えているものに向き合っていく。

主人公の心の内をよく表現しているなとも感心してしまいました。よい本に出会えました。

「嵯峨野花譜」

嵯峨野花譜嵯峨野花譜
葉室 麟
文藝春秋

少年僧:胤舜は大覚寺花務職:広甫の弟子。若年ながら兄弟子達にも活花の才では一目置かれている。父・母と一緒に暮らせぬ宿命をを負った少年僧が、降りかかる難題を活花をとおして乗り越えてゆくおはなし。華道の世界を映像でなく文章で美しく表現しているなと思いました。
胤舜という名前はたしか「宮本武蔵」にも出てきましたよね。奈良の棒術の達人僧でした。「どうして同じ名前を使ったんだろう?」なんて考えてしまいます。
武家の世界を描くことが多かった葉室作品ですが、一つ新しい世界を開いたのでしょうか。章ごとの小見出しを飾るモノクロで描かれた花のページもまたいいなと思いました。

「静かな雨」

静かな雨

「静かな雨」
宮下奈都
文藝春秋

勤務先が整理されることになり、暗いおはなしの滑り出し。でもその帰りにパチンコ屋の駐車乗で発見した屋台のたい焼きやさん、感じのいい女の子のお店でたいやきがまたおいしい。

 再就職が決まり、たい焼きやさんにも通うようになり、その女の子との距離も縮まってきたと思うころ、女の子は事故にまきこまれてしまう。病院で眠り続ける女の子を見舞いに通う主人公、・・・・。

 なかなかいいおはなしでした。

「空飛ぶタイヤ」

空飛ぶタイヤ「空飛ぶタイヤ」
池井戸 潤
実業之日本社

走行中の赤松運送のトラックの車輪が外れて母子連れを直撃し、母親は死亡という事故が起きた。メーカーの赤松運送の整備不良が原因との調査結果で警察の家宅捜索を受けるが、家宅捜索では赤松運送の落ち度は発見されない。顧客は離れ、被害者からも訴えられる。メインバンクからの冷遇、社長:赤松の子どもたちもまたいじめを受けるなど仕事も家庭も窮地に立たされる中で、構造的欠陥を疑い赤松は独自に調査を始める。

大企業の横暴に中小企業が立ち向かう構図、財閥系の数年前にリコール隠しが発覚しているホープ自動車、親会社のホープ重工、東京ホープ銀行等々現実にある社会構図を取り込んでいてまた面白い。そして最後はスカッと終わってくれる池井戸作品、今回も楽しみました。

「羊と鋼の森」

羊と鋼の森「羊と鋼の森」
宮下 捺都
文藝春秋

主人公は高校生の時たまたま先生に頼まれて、体育館のピアノに調律師さんを案内をすることに。初めてみる調律の世界に惹かれて調律師の道にすすむことになる。

純正調、平均律なんて言葉を度々耳にしてきた私には我が家に来る調律師さんの作業にも興味津々です。そんな私もピアノの調律は音の高さを整えるだけの作業と思っていたのですが、それだけではない奥深い世界のようです。ピアニストとともに音楽を作り上げていく人のように思えてきました。

調律時にあらわになるピアノの内部、きれいに並んだ木製のハンマー、ハンマーの先端に付いているフェルト、鋼製の弦、弦を支え調整するために林立するピン、そしてそこから流れ出る響きの世界、そんな世界を「羊と鋼の森」と名付けたようです。

昨年の本屋大賞作品、ピアノの世界がいいなと思える一冊です。