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「あきない世傳金と銀6」

あきない世傳金と銀6

あきない世傳金と銀6
本流編
髙田 郁
角川春樹事務所

 シリーズ6作目。半年ごとに1冊づつ発表されてきたのですが、今回は間に「みをつくし料理帖」の番外編の発表があったために1年ぶりの続編登場です。お陰で前作の内容を忘れてしまった。智蔵さんは亡くなってしまっていたんですね、物語はそこからです。

五鈴屋はいよいよ江戸進出へ向けて本格的に動き出します。華々しく進出するのでなく「小さく生んで大きく育てる」、そして「買うての幸い、売っての幸せ」のために2年の準備期間と、さらに主人公:幸が江戸に移り住んでからも開店に向けて半年以上、その準備の話に惹き込まれます。これから江戸店がどう育っていくのか、楽しみです。

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「昨日の海は」

昨日の海は昨日の海は
近藤史恵
PHP

 南四国の海辺の町に高校生光介は今は閉鎖している写真店に住む高校生。この家に母の姉の母娘が帰ってきて一緒に住むことに。そしてそれまで知らなかった祖父母の心中事件を知る。写真の世界にも心を向けながら祖父母の死について徐々にひもといていく物語。クラスメイトの絵里香に閉まりきりの店のシャッターに絵を描くことを依頼する、こちらの関係もちょっと気になるストーリーです。

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「風の果て」(上・下)

風の果て

風の果て(上・下)
藤沢周平
文春文庫

藩の家老を務める又左右衛門に少年時代からの友人市乃丞から果たし状が届く。剣術道場に通っていた頃からの話と現在の話を織り交ぜながらの展開。この前読んだ山本周五郎「ながい坂」と同様にここでも主人公は下級武士の部屋住みの身分から新田開発を目指し、やがては家老職までのぼりつめていく。同じ道場での名家の友人忠兵衛との関係も面白い。周五郎作品とちょうど同じような設定ですすむ話ですが、人物の描き方などに違いが出ていて、そういう意味でも面白い作品です。

藤沢周平と山本周五郎どちらも好きな作家ですが、私はどちらかというと藤沢周平ファンかな~。

「ながい坂」(上・下)

ながい坂ながい坂(上・下)
山本周五郎
新潮文庫

下級武士の家に生まれた小三郎(後、三浦主水正)は、身分の違いから体験した理不尽な事件から一念発起して上士が通う尚功館に入学する。文武に才能を開花させ、異例の出世を遂げるが藩内の政争にも巻き込まれていく。代々の城代家老の滝沢家に生まれ才豊かで将来を嘱望されていた荒雄(後、兵部)の挫折と対照的に描かれている。藩内の名門:山根家の男勝りの娘:つるとの関係もまたおもしろい。

読みごたえのある山本周五郎最後の長編です。

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「はじめての日本現代史」

はじめての日本現代史はじめての日本現代史
- 学校では“時間切れ”の通史 -
伊勢弘志・飛矢崎雅也
芙蓉書房出版

鎖国していた江戸時代から奇跡的な近代化を遂げ欧米の強国の植民地化から免れた日本があの愚かな戦争に向かって突きすすみました。その近代史こそ最も学ぶべき歴史だと私も思うのですが、筆者が表題に掲げているように「学校では“時間切れ”の通史」として省略されたり駆け足で通り過ぎているのが歴史教育の実情です。だからこそ大人になって改めてこの時代の歴史を眺めることには意義深いものがあると思うのです。この本で取り上げているのは第一次世界大戦後から。この時代の指導者達は残念ながら世界の情勢を把握できていなかったなと、非常に見通しが甘いまま戦争に突きすすんでいったのだなと思いました。

さらに終戦から安倍内閣までを解説しています。当初の日本が再び軍事化するのを防ぐ占領政策が、冷戦構造下で求められる日本の役割が変わったのをはじめとして、世界情勢の変化とアメリカの政権の変遷などに振り回されて来たことが理解できました。私の意識にあるのは佐藤内閣以後ですが、「私が生活してきた社会はこういう流れの中のものだったんだ」と感心してしまいます。
受験を考えなければ最も大事な現代史、みなさんも紐といてみませんか。

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「草雲雀」

草雲雀草雲雀
葉室 麟
実業之日本社

 江戸時代の武家を題材にした物語。栗屋清吾は剣の腕は立つが栗屋家の三男坊で部屋住みの身分。道場仲間の山倉伊八郎も同じような身分だが、その伊八郎に実父の後を継いで藩の筆頭家老にという話が持ち上がる。清吾は伊八郎に用心棒を頼まれ、二人で運命を切り開いていく物語。軽い読み物風ではありますが清吾の実直さと伊八郎の剛胆さですすむはなしは痛快です。

「この嘘がばれないうちに」

この嘘がばれないうちにこの嘘がばれないうちに
川口俊和
サンマーク出版

前作の「コーヒーが冷めないうちに」は昨年映画化されるほど好評だったんですね。その続編です。
喫茶店「フニクラフニクラ」、そのある座席に座ると出されたコーヒーが冷めるまでの間タイムスリップして人に会うことができる。

第1話『親友』22年前に亡くなった親友に会いに行く男の話
第2話『親子』母親の葬儀に出られなかった息子の話
第3話『恋人』結婚できなかった恋人に会いに行く男の話
第4を『夫婦』妻にプレゼントを渡せなかった老刑事の話

いずれもじんわり「読んでよかったな!」と思えるミニストーリー。これらの話の中で店で働く数(女性の名前)やその従兄妹:店主の父娘の抱える過去も少しずつ解きほぐされていきます。
今作もおすすめ。

「静かな木」

静かな木静かな木
藤沢周平
新潮社

短編集で、下級武士の家を舞台にした「岡安家の犬」・「静かな木」・「偉丈夫」の3作を収録。
1作目は家族揃って犬が大好き、飼い犬を可愛がっている岡安家。その飼い犬を巡って友人との諍い、でも最後はちょっと笑えてしまうお話し。2作目は隠居老人が家族の危機をなんとかしようと静かに、奮闘するお話し。「三屋清左右衛門残日録」を思わせるような短編でした。

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「必ず、愛は勝つ!」

必ず、愛は勝つ!

必ず、愛は勝つ!
車イスサッカー監督羽中田昌の挑戦
戸塚 啓
講談社

正月の選手権大会に4年連続ベスト4、うち3回準優勝と輝かしい時代の韮崎高校サッカー部で3年間国立競技場でプレーした羽中田さん。その後交通事故で車イス生活となってしまったが、それでもプロチームの監督を目指した実録。先の見えない中でもポジティブな生き方を貫く姿、それを支える家族、多くのサッカー関係者の支援。車イス監督は知っていましたが、そこまでの物語はじめて知りました。

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「天翔ける」

天翔ける天翔ける
葉室 麟
角川書店

幕末に名君と言われた福井藩主:松平春嶽の物語。時代物作品の多い著者ですが、実在の人物を歴史に則って書いている感じで今まで呼んできた作品とはちょっと趣が違う感じがします。でも、西郷隆盛を描いた「大獄 西郷青嵐賦」とは共通点があるかな。史実をよく調べて、淡々と語り描いている印象です。

読む前の私の知識は「維新の頃松平春嶽という人物がいた」という程度、この人物の維新の頃どう存在しどう働いたのか、はじめて知ることができました。昨年は大河ドラマ「西郷どん」もありました。同じ時代を別な視点で眺めることができたように思います。15代将軍の徳川慶喜像もまた面白い。

葉室さんの文章、私は好きです。西郷の死と共にこの人の一生もスッと収めてしまったような終わり方、改めて西郷さんはこの時代を代表する人物だったんだなとも思いました。