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「嘘の木」

嘘の木

「嘘の木」
フランシス・ハーディング
児玉敦子 訳
東京創元社

 博物学者の父サンダリーは翼のある人類の発見者として高名であったが、その化石がねつ造であるという噂から一家はヴェイン島に移住してくる。それは島での発掘現場からの招きにもよったのだが、やがてこの島でも父の疑惑が広まってしまう。そして父の不慮の死。その死については自殺の疑いが膨らみ、埋葬もままならない。娘のフェイスは博物学に関心を寄せる14歳の少女、父の残した嘘を養分として成長する「嘘の木」の力を借りながら尊敬する父の汚名を晴らそうとするが・・・・。
女性が科学を志すことはタブーであったり、自殺者が人の道に反する者として扱われたりする時代背景の中で少女が奮闘するおはなしでした。

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「疑心」

疑心「疑心」
-隠蔽捜査3-
今野 敏
新潮社

 アメリカ大統領来日に伴う警備体制に竜崎は方面警備本部長に抜擢される。その秘書として送られてきたのは魅力的な女性キャリアの畠山。竜崎の心に動揺が広がり、合理性の塊のような竜崎も感情に振り回され好ましく思えてくる。前作に引き続き配下のくせ者刑事:戸高が事態を好転させるきっかけをもたらしなかなかいい関係になってきました。

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「果断」

果断「果断」
隠蔽捜査2
今野 敏
新潮文庫

隠蔽捜査の続編です。
前作で降格左遷人事を受けた竜崎の今度の職は東京の大森署長。降格ではあっても今度は一国一城の主、この主人公が本領発揮できる環境のようです。この巻では拳銃を持った逃走犯の立てこもり事件で竜崎の下した決断に非難や責任が降りかかります。妻:冴子の入院もあり、合理主義者竜崎も心が揺らいだり弱気になったりと親しみが持てたりします。解説にもありますが、「俺は、いつも揺れ動いているよ。原則を大切にしようと努力しているだけだ」との竜崎の言葉、いいな!

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「本を守ろうとする猫の話」

本を守ろうとする猫の話

「本を守ろうとする猫の話」
夏川草介
小学館

 主人公:夏木林太郎は、幼い頃に両親が離婚し母は若くして他界したため、自宅を兼ねた古書店:夏木書店を経営する祖父に育てられた高校生。その祖父をも亡くしたところから話は始まる。林太郎は本好きではあるがその他にはこれといって特徴のない高校生、間もなく叔母に引き取られることになるのだが、それまでのあいだ学校を休み店の掃除など祖父のやっていた生活を始めているとそこに人間の言葉を話す猫が登場、本をすくう手助けを頼まれる。
学校を休む林太郎を心配して度々店を訪れる女学級委員長との関係もちょっと気になるなか、本離れが進む現代社会の危機感を感じつつ、本の世界本来の魅力を再確認させるようなお話しをファンタジックに、そして本好きオタクの主人公をちょっとかっこよく思えるように物語っています。

「神様のカルテ」シリーズでおなじみの夏川草介さんが新しい世界を拓いてくれたようです。

「居酒屋兆治」

居酒屋兆治

「居酒屋兆治」
山口 瞳
小学館

 山本周五郎が高く買っていたという作家:山口瞳の作品、気になっていました。「居酒屋・・」とうたっているけれど、どうやら舞台は焼鳥屋さん。そして時は昭和。この店に子ども時代からの仲間のような常連さんがやってきて織りなす人間模様。「居酒屋ぼったくり」のように次々としゃれた料理や酒が登場するのと異なり、主人公の不器用な生き方を描いているような作品。おとこのお話しという感じがしました。

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「点と線」

時刻表を殺意が走る

「点と線」
松本清張
新潮社

 有名な清張作品。汚職事件捜査中の××省課長補佐の博多での情死事件に殺人事件ではないかとの疑問を持ち、列車時刻表に絡む完璧なアリバイを崩していく推理小説。新幹線の開通以前で東京-博多間が特急で約20時間、青函連絡船が登場したりと時代を感じさせます。最後は手紙の中で真相が明かされて行きますが、犯人を前にして語って追い詰めて欲しいなんて思うのは読者のわがままでしょうか。
読みながらやっぱり考えてしまいますね、われわれ現実世界の財務省職員の自殺事件。こちらもしっかり謎を解いて欲しいな。

「隠蔽捜査」

隠蔽捜査「隠蔽捜査」
今野 敏
新潮社

 先日TVで10年前に無実の罪で半年近く勾留された経験を持つ元厚生労働事務次官・村木厚子さんがこの著者と対談していました。村木さんは今野作品の愛読者とのこと、今度読んでみようと思ってはじめて手にしたのがこの小説。
竜崎伸也47歳、東大卒の警察庁キャリアで現在は警察庁長官官房総務課長。家庭のことは妻に任せエリートコースをひたすら歩んできた竜崎だが、社会復帰した少年犯罪加害者への連続殺人事件のマスコミ対策に追われると同時に息子の犯罪行為にも遭遇する。エリート意識を紛々と漂わせるのにはちょっと不快感も覚えますが、悩みながらも真っ直ぐ突きすすんでいく主人公には肩入れしてしまいます。

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「鳴門秘帖」

鳴門秘帖

鳴門秘帖(一・二・三)
吉川英治
講談社

 BS時代劇でこの鳴門秘帖が放映されているようですが、残念ながら我が家では・・・・。
阿波の国藩主:蜂須賀家を中心とした倒幕の動きに、それを調べようと隠密:甲賀世阿弥が阿波に潜入したしたが何年も行方不明。そこで世阿弥の足跡をたどろうと阿波に潜入しようとする主人公の物語。舞台は大阪・京都・江戸・中山道・阿波と移っていきます。主人公は剣では滅法腕の立つ法月弦之丞で、それをとりまくのは弦之丞に心寄せる女掏摸のお綱、弦之丞の許嫁お知恵様、弦之丞と志を一にする目明かし万吉、お綱に心寄せ何かと弦之丞をつけ狙うお十屋孫兵衛、お知恵様に横恋慕しやはり弦之丞の妨げとなる旅川周馬などなど多彩な顔ぶれが物語を彩っている。それぞれの登場人物が「宮本武蔵」に登場する人物とも重なって見え、不朽の名作「宮本武蔵」下地になった作品のようにも思いました。
ただストーリーの組み立ては少し強引かな、最後には「著者はかなりの尊皇思想だったのかな」なんてことも思ってしまいました。

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「ライオンのおやつ」

ライオンのおやつ

ライオンのおやつ
小川 糸
ポプラ社

 ガンとの長い闘病の末余命幾ばくもないことを宣告されてしまった若い女性が、瀬戸内海の島にあるホスピス施設:「ライオンの家」にやってくる。ここにはゲスト(入居者)がリクエストしたもう一度食べたい思い出のおやつを一つだけ選んでみんなで食べるという週1回の「おやつの時間」がある。この施設の代表であるマドンナのあたたかい寄り添い、ぶどう畑で働く青年:タヒチ君、セラピー犬のロッカに囲まれて先に逝く人を看取り、やがては主人公が穏やかに死をむかえるまでの物語。悲壮感漂うはなしではなく、こんな終末が迎えられたらいいなと思えるようなおはなしでした。

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「居酒屋ぼったくり4」

居酒屋ぼったくり4居酒屋ぼったくり4
秋川滝美
アルファポリス

 シリーズ第4作目。若い女性が妹と一緒に営む居酒屋「ぼったくり」。名前に反して、料理が美味しくて財布にやさしい。常連客が集い、人情味あふれる小さな話が料理と共に出てくるミニストーリーが1冊に6話収められている。この居酒屋でのはなしが基本なのですが、今回の第4話は店で使っていたオーブントースターが壊れて大型家電店に買いに行くはなし。成り行きで気になる客:要と買い物、そして要の自宅へ。ちょっとした出張料理のようなはなしがまたよかった。

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