月別アーカイブ: 2025年2月

「義民が駆ける」

義民が駆ける「義民が駆ける」
藤沢周平
中央公論新社

 江戸時代天保年間に起こった天保義民事件を題材とした小説。

幕府による出羽国荘内(庄内)藩主酒井忠器に対して越後長岡藩への領地替えの命が下る。これは武蔵川越藩と三者による領地替え、川越藩が大奥に取り入って荘内藩の豊かな領地を手に入れ荘内藩酒井家にとっては実質三分の一の禄高に落とされるという理不尽なもの。荘内藩ではこれを避けるべく手を尽くすが、領民もまた領主が変わらぬように動き出す。百姓達は「百姓たりといえども二君に仕えず」を旗印にしたという、そんなきれい事ばかりではないだろうが、それでもこの時代の歴史に刻まれているこの事件に驚きを感じました。

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著者は江戸時代庄内藩であった鶴岡市の出身、この事件を作品として取り上げて見たいとの強い思いがあったのかも知れません。

「青狼記」

青狼記「青狼記」
楡周平
講談社

 大陸(多分中国)で奉金・華漢・宋北・湖朝・楽天の五国が乱立していた。その最も弱小国:楽天は特産の溶光石の各国への供給を戦略的に巧みに供給する事で生き延び、一番の大国:奉金との間で盟約を結び国の存続を図る。その盟約に楽天は忠英、奉金は春申という双方の士族の鑑・国の宝と言われるほど臣・民から信頼と尊敬を集める高官を人質として差し出す。父の後を継いだ忠英の子:趙浚も父同様に国・帝への忠誠を貫き功績をあげていくが、そんな趙浚に対する処遇は大変冷たいもの。
権力者の欲望・身勝手さ・疑い深さの中で義を貫く趙浚の物語。この物語の中で火薬が誕生し戦の仕方に大変革が起こるところ、更にはこの火薬が国主に野望の火を灯してしまうのも面白い。

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「和僑」

和僑「和僑」
楡 周平
祥伝社

過疎高齢化に悩んでいた緑原町は豊かな老後をコンセプトにした老人向け定住施設「プラチナタウン」を誘致して町の活性化に成功した。プラチナタウンは入居者八千人、プラチナタウンが生んだ雇用が六百人。そのお陰で寂れていた商店街も活気を取り戻し、緑原出身者のUターンも増えている。大手総合商社「四井商事」から転身してプラチナタウンを誘致した町長:山崎鉄郎はその功労者、プラチナタウンを拡張して更に活性化を目論もうと圧力が掛かるが、ここだけに頼る危うさに加え将来の高齢者人口減少も見据える山崎には新たな振興策が必要と考えている。意欲的に肉屋と食肉の卸を営む正(しよう)ちゃん(辰野正一)、農協を飛び出し新しい野菜の流通形態を確立した西山圭介、役場産業振興課の若手トコちゃん(工藤登美子)等とともに農畜産物でのアメリカ進出で新しい町の将来を模索するこのお話し、面白かった。

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「百万ドルをとり返せ!」

百万ドルを取り返せ!「百万ドルをとり返せ!」
ジェフリー・アーチャー
永井 淳 訳
新潮文庫

 あくどいことも平気で、一代で身代を築いた億万長者のハーヴェイ。ここでも法の網を潜って自身の持つ実態の怪しい会社株を巧みに操り大儲け。オクスフォード大学の客員研究員のスティーブン、上流階級専門の医師ロビン、画廊経営者のジャン・ピエール、役者を目指していたイギリス貴族の御曹司ジェイムズの四人はその株でまんまと大金を失ってしまう。被害に遭ったこの四人が結束して、法で裁けぬハーヴェイから騙し取られた百万ドルを取り返そうと、それぞれが自身の分野を活かして練ったプランをジェイムズの美人パートナーも加わり結束して遂行していく。果たして百万ドルは取り返せるのか?

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1月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1486
ナイス数:34

青狼記青狼記
読了日:01月23日 著者:楡 周平
百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)
読了日:01月15日 著者:ジェフリー アーチャー
成瀬は天下を取りにいく成瀬は天下を取りにいく
読了日:01月11日 著者:宮島 未奈
和僑 (祥伝社文庫)和僑 (祥伝社文庫)
読了日:01月11日 著者:楡周平

読書メーター

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