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「神様のカルテ」

神様のカルテ

「神様のカルテ」
夏川草介
小学館

 舞台は長野県松本市、民間病院に勤める若い医師とその周辺の物語。慢性的な医者不足でお医者さんというのは多忙なものだと聞いてはいましたが、この小説でもひしひしと。大学病院に勤めるのと地域医療に携わるのでは仕事内容や将来設計などずいぶんと違うらしい。仕事を続けながら、大学病院に戻るか地域医療の激務を続けるか迷う主人公がおり、大学病院で見放された患者さんに心を尽くし死の直前の感謝のことばは感動的でした。写真家のパートナーとのユニークな心あたたまる組み合わせ、アパートの隣人たちとの交流も泣かせます。

作者:夏川草介さんはやはり長野県のお医者さん。主人公と同じ漱石好きで、ペンネームは夏目漱石・川端康成・草枕・芥川龍之介からとったとか。作者の普段の生活の周辺が描かれているのだろうと想像します。医療の激務の中での創作活動から漫画家:手塚治虫を思い出してしまいました。

「ビブリア古書堂の事件手帖4」

ビブリア古書堂4「ビブリア古書堂の事件手帖4」
~栞子さんと二つの顔~
三上 延
メディアワークス文庫

読み終わりました。3作目までは古書にまつわる謎解きを何本か集めたものだったのですが、今回はこの本一冊を通して一つのおはなし。だんだんと力が入ってきたようです。

江戸川乱歩作品のコレクターからの依頼を解決していくというもの。栞子さんの母もいよいよ登場、そして主人公と栞子さんとの恋もちょっと進展?

今回も楽しく読めました。

 

「ビブリア古書堂の事件手帳2」

ビブリア古書堂2

ビブリア古書堂の事件手帳2
栞子さんと謎めく日常
三上 延 著
メディアワークス文庫

 

「ビブリア古書堂の・・・・」の続編があったんですね、別の図書館で発見。一つの古書にまつわるはなしを何本か集めたという形式、でも前編のつづきという形でかかれています。そして内容は、一冊目以上におもしろく、このスタイルでの創作にのってきた感じです。あとがきによると、この小説に登場する本はすべて実在するものだとか。ということは、この作者も相当な本好き、そしてひょっとすると古書好き。本や古本に少々あこがれを持っている人達(私も少々)にはおもしろい推理ものでした。また続編を読んでみようと思います。

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「ルーズヴェルトゲーム」

ルーズヴェルトゲーム

ルーズヴェルトゲーム
池井戸 潤
講談社

 

経営危機に陥っている中堅企業とその野球部。企業が危機を脱するだけのストーリーではなく、社会人野球チームが社員から愛され生き延びてゆく。そんな両者の絡みもあっていっそうおもしろい小説でした。

その企業の名前は青島製作所。先日新聞のスポーツ欄に「『ルーズヴェルトゲーム』のモデルとなった鷺宮製作所、社会人野球日本選手権本大会一回戦敗退」の記事を見つけました。「あ、ここがモデルだったのか」と、真偽はわかりませんが社会人野球チームへの見る目は変わりそうです。

「緋の天空」

緋の天空

「緋の天空」
葉室 麟
集英社

今年8月30日初版の新作。今までこの作家の作品は武士道やその周囲の女性を描いた物しか読んでいませんでした。今回の舞台は飛鳥から奈良時代の皇室の周囲、そして主人公は奈良の大仏をつくった聖武天皇の后:光明子でした。同じ葉室作品でもちょっと趣が違いました。

女性天皇が次々と登場した時代のこと、そして主人公:光明子は天皇ではないけれど国の中心になった人物。資料の少ない時代のこと、それだけ創作部分も多いのだと思います。個人的には、こういった皇室中心の、人物を神格化したようなはなしはあまり好きにはなれません。でもそれはあくまで私個人のこと、この作家も新しい世界に踏み込んだのかも知れません。

「どろぼうのどろぼん」

どろぼん

「どろぼうのどろぼん」
齊藤 倫 著
牡丹 靖佳 画
福音館書店

 

地域の図書館の新刊書コーナーでみつけました。

「どろぼん」という名前の泥棒、ものの声が聞こえ持ち主の忘れ去られた物の希望を叶え盗み出す。忘れている持ち主が盗まれたことに気づくはずはなく、物の希望を叶えてあげている泥棒。そんなどろぼんの話を取り調べで聞いていた刑事たちはどろぼんのために動き出す。何ともおもしろいストーリーでした。

今年9月15日初版、図書館の登録日が10月13日。栞を見るとどうやら私が初めての貸し出し利用者です。図書館ではこういった本はどのようにして選定されるのでしょうか。おもしろい本の選定に感謝です。

「ビブリア古書堂の事件手帖」

ビブリア古書堂の事件手帖「ビブリア古書堂の事件手帖」
~栞子さんと奇妙な客人たち~
三上 延 著
メディアワークス文庫

 文庫サイズですが現代っ子向けの表装、内容は古書店を舞台にしたちょっとした推理もの? 古書のわずかな情報から謎を解いていく若い女性の古書店主とそこに雇われた青年のはなし。多くの人の手を渡ってきた古本には本の内容以外にも物語があるという。謎解きもそれから主人公の若い男女のこともおもしろく読めました。

通路が狭くなるくらいにぎっしりと積まれた古書店の中、古書の世界にちょっとあこがれを持っている人には軽く楽しく読める一冊です。

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「村上海賊の娘」

読みました、なかなかの長編。

今年の本屋大賞に輝いた作品だそうです。でも・・・・、私は他人には勧められないな。「舟を編む」・「海賊と呼ばれた男」と続いてこの大賞にはブランドイメージがあったんだけどな。

物語の中心は木津川合戦という歴史上の事件を中心に組み立てられています。泉州海賊との壮絶な戦いを描いているとも言えますが戦いの優劣があまりにも簡単にひっくり返り、主人公が傷つけられても傷つけられても立ち上がって不死身であるかのような戦い方、泉州海賊が笑って死んでゆく様等々、人の命をあまりにも軽く扱っているなという印象です。こんな記述から、「これはゲームだ」といって自殺した中学生がいたなと思い出してしまいました。

(1.8k)

「天空の舟」

天空の舟「天空の舟」上・下
宮城谷昌光
文春文庫

少し日が経ってしまいましたが、読了報告。

宮城谷文学としては初期の作品のようです。
中国・夏王朝を倒し商王朝を開くのに尽くした伊尹という人物が主人公です。物語を左右するいろいろな人物が登場しますが、ある時は非常に聡明で肩入れして読み進めていると、その同一人物の欠点がいろいろとあぶり出されて嫌な人物になったりまたそれがもどったりします。人はすべて善ではなくすべて悪でもないのは確かですが、同じ人物の人物像があまりに変化すると読み手としては躊躇してしまいます。

中国文明も商王朝までは文字を持たなかったとか、そういう時代の伝説的な人物を描く長編小説を書くというのは大変なことなのでしょうね。いろいろな想いをもちながら読み終えました。