炭焼き

 竹炭作りの映像を見ていると、かつての記憶がよみがえってきます。我が家も二年ほど炭焼きをしていました。自宅の一段上の土地に大きな(?)炭窯をつくり、炭を焼いたのでした。ビデオに映った竹炭生産の映像では、箱に入った竹炭がローラーの上を転がって出てきます。細い入り口の向こうには広い炭窯の内部があり、人が入って焼き上がった炭を詰めて外に送り出してくるのです。こういうローラーこそありませんでしたが、我が家でも全く同じようにして炭を焼いていたのです。生の木を並べるときの重さから、焼き上がった後の炭の軽さが印象的でした。良い炭がぶつかるときに出る金属的な高い音もまたいいものでした。しかし、焼き上がった後の炭窯の内部は暑く、天井は低いのでずっと中腰の作業でした。更に炭の微粉が立ちこめる内部での作業では鼻の中が真っ黒になるのです。炭窯から出てくるとやっと腰を伸ばして立つことができ、何ともいえない開放感を味わいました。高齢の方たちが楽しそうに働いている様子に「いいな」と思いつつ、かつての記憶がよみがえってきて、「これもなかなか大変な作業だよな」と思い直しました。
 ついでにわずかな炭の知識を少し。私の地域では炭に二種類、白炭(しろずみ)と黒炭(くろずみ)があります。特に意識せずに聞いてきたこの言葉ですが、竹炭組合の話をしながら母にこの二つの炭の意味合いを聞いてみました。私の実家で焼いた炭や竹炭組合で焼いている炭はどうやら黒炭です。人が入れるような大きな炭焼きがまに木材を並べて蒸し焼きにし、十分冷めてから中にはいって取り出すのが黒炭です。これに対して、炭窯ははるかに小さく、釜の中に人が入れないために釜の入り口で長い金属製の金具を使って炭窯の中に木材を並べ、焼いて真っ赤になった状態の炭(これを「おき」といいました)を炭窯の外に掻き出して土の中に埋めて冷めた炭を取り出すのが白炭、この炭は灰が表面に白くついているので前者の最初から黒い黒炭に対して白炭と呼ばれてきたとの事でした。我が家のある、山間の地域のかつての主たる産業は「炭焼き」だったようです。親の姿の見よう見まねで、男の子たちはまたまたミニチュア版の「炭焼き遊び」を競ったものだそうです。
 ガソリンをはじめとする燃料が高騰する今日、自然の産物から生み出される「木炭」「竹炭」の復権があるのでしょうか。竹林が荒れてしまわないように手入れして出る竹材を竹炭に、山の手入れをして出る木材から木炭に、そんな自然エネルギーが緩やかに広がっていくのでしょうか。

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