「たそがれ清兵衛」

たそがれ清兵衛

「たそがれ清兵衛」
藤沢周平
新潮社

以前は読み漁った藤沢周平ですが、このところご無沙汰でした。図書館で目に留まって、この作品は映画化されていてなかなかの味わいの作品だった記憶がありましたが、「これまだ読んでないよな」と。

一冊丸ごとの小説だと思っていたのですが、目次を開くとタイトルがいくつも並んでいるのです。この本が短編集であることも知らずに借りてきてしまいました。映画の原作はある程度長編だとの思い込みがありましたね。

「たそがれ清兵衛」はこの本に収められている第一作目、わずか五十数ページの短編でした。いつものように剣の達者な下級武士が主人公のシンプルなストーリーで、あっという間に読み終えて物足りなさも感じます。映画では娘が二人いて女房に逝かれてしまった下級武士、でも宮沢りえが演ずる女性が何かと助けてくれるようなはなしだったと思うのですが、ここではかの女性も娘も登場せず病弱な妻の面倒をみる愛妻家の下級武士として描いています。ですから、映画化するにあたってはかなりのアレンジです。藤沢作品も好きですが、それをあのように味わいある映画作品に仕上げるそちらの制作力にも感心してしまいます。

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