「秋桜」「水底の村」
さだ まさし
短編集:「解夏」の一作目「解夏」は紹介しました。
二作目は「秋桜」、フィリピンから来た女性が主人公。ダンサーや水商売を経て農家の跡取りと結婚し、偏見の多い中でも日本にしっかりと根付いていく。この男性のお父さんがまるで準主役、よい人物を描いています。
三作目は「水底の村」。子どもの頃に住んでいた村がダムに沈んで、街へ出た幼なじみでいとこ同士の物語。私の実家のちょっと上流にも昭和の終わり頃にダムができて、私の記憶にある村が沈みました。この物語では沈んでいた村が渇水で姿をあらわすのですが、現実には建物はすべて取り壊して人工的なものは何もない状態にして湛水します。家々がたったまま沈めてしまうというのはかなり古い時代の話ではないでしょうか。でも、やはりその部落の光景などを想い描きながら読みました。
一作目に続き、両作品とも美しい短編でした。