日別アーカイブ: 2007年2月9日

枯露柿

 渋柿の皮をむいて寒風の中を干し甘く縮まった「枯露柿(ころがき)」、皆さん好きですか?地方によっては「干し柿」とかいうのだろうが、私たちの地方ではもっぱら「つるしんぼ」と呼んでいた。渋柿を収穫すると家族で皮をむき、簡単なワラ縄で10個連ねて軒先に並べて吊す、私たちの地方のかつてのありふれた風景だった。「つるしんぼ」は黒くてかちかちに固くなり、歯で引き裂きながら食べるようなものだった。


 山梨は枯露柿のなかなかの産地である。出荷もしているような地域では柿も消毒しただろうし、剥いた柿を「硫黄薫蒸」もしたはずだ。わが家でも昔一度、この硫黄薫蒸をしたことがある。そうすると、通常なら串を通した柿の切れ目から白いカビが発生するのだが、この年ばかりは全くカビが発生しなかった。しかも真っ黒になってしまうはずの枯露柿の色はきれいな飴色、「売っている枯露柿はこうやって作るのか」と妙に感心した記憶がある。


 今でもパック詰めした枯露柿をいただくことがある。たしかにきれいな飴色をしているのだが、黄色みがかったこの色に異様さを感じる。味も一味落ちると思う。硫黄という物質、燃えれば二酸化硫黄で、三宅島の全島避難の原因となったあの物質である。だから、「硫黄薫蒸をしていいわけがない」と今では思っている。(売っている枯露柿に硫黄薫蒸は禁止されているのだろうか?)
 
 枯露柿の中でも高級品は大粒の「百目(ひゃくめ)柿」でつくったものだった。家内の実家にはこの百目柿の木があり、ひときわ大粒の実がなる。わが家では毎年のようにこの柿をいただき、枯露柿をつくって食べている。一昨年は特に豊作で、たっぷりと柿をいただき、たっぷりとこの味を堪能した。敷地の隅に立っていて特に消毒をするわけでもない、肥料をやるわけでもない柿は、今まであまり意識してこなかったがまさに貴重な自然食品である。しかしこの冬は昨年の柿の異常な不作のため、わが家での枯露柿づくりはできなかった(残念!)。そしてわずかに収穫してできた貴重な枯露柿を義母からいただくと、本当にうれしい。小さく切ってよく味わいながら食べている。