日別アーカイブ: 2006年12月28日

手づくり年賀状

 わが家の年賀状はいまだに版画である。もう20年ほど前になるだろうか、「プリントごっこ」という簡易印刷機が爆発的に売れた。製造元の某社はこのおかげで一躍有名企業になったはずだ。この頃、年賀状を版画で印刷している私に、「今時プリントごっこのない家があるのけー」と軽くあしらわれた記憶は今も鮮明である。

 その「プリントごっこ」による年賀状も最近はほとんど見なくなってしまった。「プリントごっこ」もパソコンと家庭用のカラー・プリンターの普及により、ほとんどの家では物置の奥に眠ってしまったようだ。

 そんな中、わが家は今年も時代遅れの版画に取り組み、昨日やっと刷り上がった。年末のわが家の一大行事である。12月になる頃書店に行き年賀状本を漁る。目当ては一つ、「版画に使えそうな見本はないか」ということである。一番よさそうだというものが載っている本を一冊だけ買ってきて、それをまねて版画を作成する。最近はパソコン印刷用の年賀状本が豊富にあり、素材もたくさんあるので助かる。パソコン用のものなら、原画を左右反転させるのも容易で、これもまた版画には便利である。以前は水性絵の具を使っていたが、刷っていると版の溝に絵の具が段々たまってくる。たまった絵の具が、時には印刷ハガキにベトッとのってしまうことがある。だから何枚か刷ると、溝にたまった絵の具を掃除してやらなければならない。ところが、私の友人:Iさんはいつもきれいな版画年賀状を送ってくれる。「どうしてIさんの年賀状はきれいなのだろう」と思いつつ自分の版画には手こずっていたが、ある年、油性の版画絵の具の存在を知った。それ以来、溝にたまる絵の具に悩まされなくなった。

 ゴム版もまた大事な要素の一つだ。以前はホームセンターなどで買っていたが、ある年画材店で買ってみた。一見安っぽく見えたこのゴム版が、柔らかくて実に彫りやすい。細かな部分があるときは断然このゴム版に軍配が上がる。しかしこのゴム版、2年ほど前から画材店の店頭にもなくなってしまった。今年お店の人に聞いてみたところ、「その会社、なくなってしまったんですよ。」とのことである。このような使いやすい材料が消えてゆく、時代の移り変わりである。