山から里に下りてきた若い山伏が村に住み着き、村中の様々な出来事に遭遇し解決しながらながら村の人たちとの絆を作っていく物語。藤沢さんの出身は山形県鶴岡市で修験道の出羽三山の麓、そうしたことから藤沢さんの中には山伏のいる光景が広がっているのでしょうか。武家ものでも江戸の街中ものでもなく今までになかった情景ですが、あたたかいものが流れていて私の好きな藤沢さんの作品の中でもお気に入りの一作になりました。
カテゴリー別アーカイブ: 本
「津波もがんも笑いで越えて」
「津波もがんも笑いで越えて」
いのちの落語家が追った3・11
樋口 強
東京新聞
著者は43歳でがんに出会うが、その6年後からがんの仲間と家族だけを招待しての「いのちの落語独演会」を毎年開催している。52歳で退社し、執筆と「いのちの落語講演」を全国に展開している。東日本大震災で被災し、がんと二重の苦しみを抱えている人とも親しく取材し、それが「いのちの落語会・講演会」でも語られる。自身ががんを抱えているからこそ語れるおはなし。「笑いは最高の抗がん剤」なんてことばも登場します。がんとともに生きている方たちと笑いを共有し共に生きている著者、すごい人です。第5章はCDで聴く「いのちの落語-あの日を忘れない」、がんの仲間しか聴くことのできなかった落語をここで聞くことが出来ます。
お薦めの一冊!
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「フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記」
「フジコ・ヘミング14歳の夏休み絵日記」
フジコ・ヘミング
暮らしの手帖社
スウェーデン人の父と日本人の母を持つピアニスト:フジコ・ヘミング、ご存じの方も多いと思います。1999年に放送されたテレビ番組で一躍有名になりましたが、戦後間もない頃そのフジコが中学生時代の夏休みに書いたカラー刷りの絵日記と当時の回想が語られています。物資が乏しいこの時代に、食べ物のこと、おしゃれのことなど少女時代の心情が生き生きと描き出されています。
ユダヤ人であるがために日本に亡命・帰化したピアニスト:レオニード・クロイツァーの教えを受けていたレッスンのことも登場してきます。私は熱烈なクロイツァー・ファン、私達が合唱指導を受けた佐々木先生もまたクロイツァーの教えを受け親交があったそうです。そしてクロイツァーから佐々木先生へと音楽が流れているのを感じるのですが、その音楽がフジコ・ヘミングにも流れていることを感じます。
一度、フジコ・ヘミングのコンサートも聴いてみたいものです。
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「こうして店は潰れた」
「こうして店は潰れた」
地域土着スーパー「やまと」の教訓
小林 久
商業界
山梨県韮崎市に古くからあった魚屋さんから大手スーパーに対抗して十数店舗を展開するまでになった「スーパーやまと」が昨年末に閉店しました。古い体質を経営改善して成長させた若い社長の成功と挫折の記録です。
私も「スーパーやまと」の一店舗に依存する地域の住民です。レジ袋の有料化に取り組んだり、多様なリサイクルボックスを駐車場に設けたり、県の教育長までつとめた社長。でも私の知らないことも沢山ありました。小売業界の裏事情もちょっぴり覗かせてくれて、赤字体質から抜け出しながらも店を閉めざるを得なかったこと、倒産後も決して逃げることなく外部との対応に当たったことなど感心すること満載です。
我が家も地域に食料品店がなくなり、店の閉鎖による不自由さも実感しました。高校時代には元の魚屋さん「やまと」の近くに下宿していて、この店に毎日魚を買いに行っていました。当時はパック詰めせずに冷蔵庫に並んだ魚を、希望すれば水をふんだんに使ったまな板の上で長いゴムの前掛けをしたお店の男性が切ってくれました。そんなことも思い起こしながら興味深く一気に読ませていただきました。
「十万分の一の偶然」
「下町ロケット ヤタガラス」
前作「下町ロケット ゴースト」ではじまった新しいおはなしの完結編です。
帝国重工はロケット事業で打ち上げた人工衛星からの位置情報を利用しての農業分野に参入、主人公:佃率いる佃製作所は持ち前のエンジン技術に加え新たにトランスミッション分野にも乗りだし、帝国重工とともに無人走行のトラクターなど農機の開発・実用化を目指す物語です。競合企業グループとのせめぎ合いに加え、佃製作所を退社して農家を継いだ殿村の周辺を描いたり、敵は競合他社だけでなく帝国重工内にももいたり。そして帝国重工を退社している二人の対照的な行方も絡めて、先へ先へと読み進めなければいられないおもしろさ。
今回も一気読みでした。
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「負けるもんか」
花だより
花だより
みをつくし料理帖 特別巻
髙田 郁
角川春樹事務所
人気氏リーズ「みをつくし料理帖」は10巻で完結しました。主人公をはじめ登場人物は江戸と大阪に別れそれぞれの生活をはじめるところで終わったのですが、登場人物四人のその後のことを綴った四つの物語、それぞれからの「花だより」ということのようです。
第一話はつる屋の主人:種市が澪を訪ねて大阪行きを企てる話、第二話は澪の想い想われ人だった小松原様の夫婦が徐々に心通わせていく話、第三話は吉原から救い出された野江ちゃんの話、そして最後は澪と源斉さんのその後の話です。各話ともやはり味なひと品が登場してこのシリーズの続編らしい筋立てです。いずれも読後はほんのり幸福感が感じられる話でどれもいいのですが、私としては中でも第二話がよかったかな。
皆さんもどうぞおたのしみ下さい。
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