「紙つなげ!」

紙つなげ

紙つなげ!
彼らが本の紙を造っている
再生・日本製紙石巻工場
佐々涼子
早川書房

石巻という街は日本製紙の企業城下町であるらしい。この日本製紙の主力工場:石巻工場が2011年の大地震に伴う大津波に飲み込まれた。前半はその被災の状況が語られ、このところ読んでいる「プロメテウスの罠」とも重なってくる印象でした。

壊滅的な被害、工場の閉鎖も予想される中、工場の復興に向かって歩み出すのがこの本のおもしろいところ。取りあえず主力マシン1台を半年で復興するという無謀とも言える目標をたて、各部署それぞれが奇跡的にその目標をクリアして次の部署に襷を渡していく。相手に無理難題をいっているようでありながら、その底辺には自己の信念と相手への思い遣りが隠れている。そして半年、復活のお披露目で製紙の長い工程を切れることなく紙がつながっていく、感動的でした。危機的な状況の中の人の心の暗部も語られていて、単なる復興の成功物語というだけでなく重いテーマを語ってくれているようです。

私も本は読みますが、本の紙をどこで造っているか、どんな風に造っているかなど考えることはありませんでした。ましてや、各出版社がもつ単行本・文庫・写真誌・コミック誌等々それぞれにこだわりがあり、使われる紙についてもそうであることなど思いも寄らないことでした。そのこだわりに製紙の技術者が誇りをもって応えていく、そんな技術者たちが未曾有の災害から復興を遂げていくはなし、読み応えがありました。

「紙つなげ!」」への2件のフィードバック

  1. 大草原のヤス

    面白そうですね、私も読んでみたくなりました。早速、図書館に予約してみます。
    あのとてつもなく大きかった震災にめげず、復興に立ち向かっていく日本人の芯の強さを感じます。

    返信
    1. すすき 投稿作成者

      大草原のヤス様
      私の読後感をお読みいただき、ありがとうございます。いい本でしたよ。
      また別の読後感を読めますね、きっと。楽しみにしております。

      返信

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