私たちのカルテット

 学年がすすんで、私たちの周囲でもカルテットをやろうということになった。同級生三人に声の出るテナーの後輩を加えて唱いだした。この頃市販されていた黒人霊歌の男声合唱の楽譜から何曲かを選んで唱ったが、その他にメンバーの後輩がもってきた曲があった。


    雪が降ってきた ほんの少しだけれど
    私の胸の中に 積もりそうな雪だった
    幸せをなくした 黒い心の中に
    冷たくさびしい 白い手が忍び寄る


    雪が融けてきた ほんの少しだけれど
    私の胸の中に 残りそうな雪だった
    灰色の雲が 私に教えてくれた
    明るい陽射しが すぐそこに来ていると


という曲。この後輩は、この曲を本当に唱いたかったのだろう。「これ、唱いましょう。」と持ってきたのだった。こうしてしばらくの期間、夜練習室に集まって唱っていた。たまたまこのときの練習録音がカセットテープに1本残っている。今聴くと、私以外はなかなか歌の上手な人たちだ。同級生の友人が中心になって練習をすすめるのだが、かなり真正面からハモろうと奮闘しているのが録音から伝わってくる。山形から送られてきた男声四重唱の録音のお返しとしては役不足であったが、わたしたちもこんなことをしていたという気持ちで山形の知人に送ってみた。しばらくして、以下のような過分なお褒めの言葉をいただいた。


  昨日MDが届き、早速、今日聞いてみました。
  艶のある声で若々しさが溢れ出ているのが良く分かります。
  皆、合唱の醍醐味に浸りたいと願って情熱を燃やしているのが良く分かります。
  特に、本人達が気付いているかどうか分かりせんが、CDの最初の部分で聴きあって歌おうとしている時はきれいなハーモニーが出ています。


私たちの四重唱の録音は山形のそれには及びもつかないが、私たちの音楽に浸っていた頃の痕跡ではある。

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