「素晴らしきハーモニー」

「素晴らしきハーモニー」

○○○○子

 四月のある日曜、四ヶ月ぶりに「みちのく」に参加した
私は、あまりのことにすっかり驚いてしまいました。この
素晴らしいハーモニー。これが本当にあの「みちのく」な
のだろうか。

 寒い日曜日、わずか十二・三名が幼稚園の狭い部屋
に集まり、古びたピアノをたたき乍ら分離唱。いざ合唱
という時、女声が五名たらずでしかも全員アルト、仕方
なくソプラノにまわりはしたものの自分のつたない声に
顔をしかめ、○○しいしい歌ったあの頃。そんな思い出だ
けを持っていた私にとって、広い講堂で五十名あまりの
人達がすばらしいハーモニーを生み出している光景は
信じ難いものでした。人数だけをそろえるのでなくて、み
んなの心がとけ合ってこそ始めてのすばらしいハーモ
ニーが生まれるという合唱の特殊性を考える時、日常
生活に対立や誤解がいかに多いかを、そして心を合わ
せることがいかに困難であるかを経験させられている
者にとって、この様な合唱が三ヶ月という短期間で行わ
れ得たということは何といってもすばらしいことだと思い
ます。今となってはその過程を-物事のはじめには必
ずつきものの様々な困難や苦悩-を体験する機会は永
久に失われたわけですが、あのささやかな灯火を守り、
これまで育ててこられたパイオニアの方々の合唱への
情熱と愛情、そして勇気に心から敬意と感謝をささげた
いと思います。

 又、このハーモニーの秘密は佐々木先生という素晴ら
しい指導者を得たことにあると思います。手品をいっしょ
うけんめいみつめている子供が自分の持っていたお菓
子がいつの間にか手品師の手にあるのをみてびっくりす
る様に、先生の話しを聞き手をいっしんに見つめ夢中で
歌っているうちに、生まれ出るハーモニーの美しさに驚
くといった具合です。そしてこのノートを手にして私は又
一つ、ハーモニーの秘密をみつけました。

「月光に照り映える薬師寺の塔を本当に美しい」と思い
「金よりも貧しい自分の心を豊かにして行こうという現在
の君が僕にとっての友なのである」といい
「ふる里の丘に離れがたい愛着と尽きぬ幸せを感じ」
・・・・etc

みんななんとすばらしい詩人たちでしょう
そして何と美しい心の持ち主たちでしょう

この美しい心から美しいハーモニーが生まれ出るのだと思い
ます。音楽の美しさをひたすら求め、この「美」の上にあるも
のを讃美し続けていきたいと思います。
六四・五・三一(日誌より)

みちのく第3号より

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