日別アーカイブ: 2020年8月17日

「いのちの停車場」

いのちの停車場

「いのちの停車場」
南 杏子
幻冬舎

 東京の医科大学病院で救命救急医として働いていた白石咲和子62歳が郷里:金沢で「まほろば診療所」の訪問診療医に転身する。目の回るような医療現場から一日わずか数件の訪問診療へ、しかし忙しく目の前の命を救うことだけに追われた医療からはゆったりとした現場だと思った訪問医療には個々にそれぞれ病気以外の問題も抱えた患者や家族と向き合う必要に迫られる。しかもその多くは終末期医療。それでも新しい患者に向き合いていねいに寄り添っていく主人公とスタッフの仕事ぶりは温かく、私たちの終末期もこんな訪問診療をしてもらえたらいいなと思ってしまいます。脳神経内科医であった老いた父とのつかの間の二人暮らしも、やがては骨折・入院そして次々と併発する症状で終末期に向かって駆け下るような父を、医者でありながら自身も在宅で支える家族となっていきます。
これもお薦めの一冊。