日別アーカイブ: 2007年12月2日

特集 “野の花”のごとく (その13)

満たされざる心(続々)
 最後に、この佐々木基之氏の話をきいてある指揮者がさっそく実験を試みた結果をお知らせしておこう。対象は、まだ発足して一年もたたぬアマチュア15名の混声グループである。年令も若いので音色はきたない。ドレミ唱法も困難をきわめるほどの連中だ。つまり、合唱グループとしては最低クラスとおもっていただけばよい。その人たちに、分離唱と三声を試みたわけだ。
 最初の分離唱でCEGの和音をピアノで断続しながら、その中のE音を発声させた。指揮者がE音をうたって導入するにもかかわらず、外声のCやGがとびだす始末。それでも数回ののち、全員がE音を示した。息をつかせて「エー」と長くのぼさせた音は、楽器の音を消したとたん、全員が、すっかりウナリのとれた二本のE音となって、残ったのだ。気をよくした指揮者は、つぎにG音、C音と、時間をかけて試みた。結果は、それぞれに、それは美しいユニゾンを生んだのだ。単音でやったユニゾンとはくらべものにならないものだった。このとき指揮者がおもったことは、単音指導の場合、それが強制された音であるのにたいし、この和音による方法だと、彼ら自身で作りだしたものだといえる、ことであった。この現象には、指揮者よりもうたっている連中のほうがよろこんだものだ。
 つぎは三声唱をするために、メンバーを男女別に三組に分け、もう一度さきはどの分離唱をやって、それぞれの分担を確かめておいて、再びピアノでCEGをたたいた。その余頭を十分に確かめさせて、これにとけこませたのだ。これも反復くりかえさせた。そして、断続的にたたくピアノの手を中止してみた。息をついで長くのばした三和音は六声部のハーモニーとなってみごとにひびいた。
 この方法は、メンバーひとりひとりが″作る″という興味と、簡単さがあるようだ。もちろん、一回の試みだけで、うたう曲がすべて美しくハーモニーするようになるとはいえない。しかし一回よりは二回と、彼らの合唱する音にたいし、そしてそのパートのうたいかたのなかに、その効果が目にみえて感じられるのが不思議だったという。十分に予想できる効果については、まず音程がよくなったこと。我流の声でなく、注文をつけずとも音色を考えながらうたっていること。あとのことは、これからさきの実験の結果で、どのよぅな効果があらわれるか、きわめて興味がもてる。佐々木氏の話では、三カ月から半年のうちには、すっかり変わってくるそうだ。
 山形南校OB合唱団のみなさん、どうもありがとう。そして、東京演奏会を開く十二月十一日を期待しています。    (M)
    最高のハーモニー
           優れた音楽性
  -みちのくに育った合唱を聴く夕-
     山形南高OB合唱団
   発足十周年記念東京公演
     指揮 佐々木基之
     曲目
      ・イタリアの山の歌 ・稗搗節
      ・親方と弟子    ・五つ木の子守歌
      ・やさしき愛の歌  ・夏の思い出
             他20数曲
     主催 紫翠会   後援 合唱界
     12月11日(月)P.M.6:30
     日本青年館
     入場料150円
     都内各プレイガイドにて前売中