神戸港を出港しカナダを目指す貨物船ぺがさす丸に乗り込む若者二人、一人はコックの洋一、そしてもう一人は新入り船員の六平。出港して間もなく密航の若者一人の一匹の犬が出現。主人公の二人を含む若い船員数人がこの一人と一匹の密航を助ける物語。密航がばれないかとハラハラしたり、台風の大嵐の中の航海があったり、スリル満点の物語です。
ゲド戦記の名訳で有名な清水真砂子さんが推奨する乙骨さんの作品です。
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以前読んだ「タスキメシ」の続編です。
学生時代に故障で箱根駅伝への出場がかなわなかった主人公:早馬が病院での調理師の職を辞して、スポーツ栄養学を学ぶため紫峰大学の大学院に入学する。箱根駅伝を夢見ながらまだ出場がかなわぬ駅伝部の監督の強力な勧誘を受け、駅伝部の寮に住み込み、管理栄養士兼コーチとして選手達とともに故障者にも寄り添いながら箱根駅伝出場を目指す物語。駅伝部員に出される食事メニューが話の節毎に掲げられたユニークな構成で語られていきます。
主人公の元同僚や弟などは東京オリンピックを目指してMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)に出場、そしてフィナーレでは東京オリンピックのマラソンも登場するのですが、オリンピック本番のマラソンも会場は東京。どうやら昨年のマラソン会場移転騒ぎの前に執筆されたようです。現実のことも交えてリアルさを高めた作品を目指したのでしょうが、こんなところにも移転騒ぎの影響が出てしまいました。
「よろずや平四郎活人剣(上・下)」
藤沢周平
文春文庫
主人公・神名平四郎は旗本の妾腹の子で冷や飯食い。実家を出て三人で剣道場を開くという話に乗ったが金を持ち逃げされ、裏店に住み着いて始めたのが「喧嘩50文、口論20文、とりもどしもの百文、よろずもめもご仲裁つかまつり候」という商売。食うや食わずの生活この商売に悪戦苦闘し、それでも徐々によろずや家業が板についていく。一話40ページほどの軽いおはなし集で楽しめる。
火鉢の炭を灰の中から掘り起こして暖をとる場面が何度も登場します、友人宅で家族の温かさをちょっと知って帰った時にはこの火鉢の火がとぼれてしまっていて、竈(へっつい)で湯を沸かしながら暖をとったりと一人暮らしのわびしさを絶妙に表現。気の小さい町人の依頼者が来て戸をたたく場面、「風かと疑ったほど小さな音だったが、耳を澄ましていると、またほとほとと戸が鳴った。」の「ほとほと」なんていう擬音語があったかな?藤沢さんの造語かなとも思いながら、でもこんな表現もいいなと思います。私はやっぱり藤沢周平ファン。
「タネの未来」
~僕が15歳でタネの会社を起業したわけ~
小林 宙
家の光協会
F1というタネのはなし、遺伝子組み換え(GM)作物のはなし、伝統野菜の種(しゅ)が減っていくというはなし、様々な野菜の種にまつわるはなしをわかりやすく解説していく。都内に住みながら群馬に畑を持ち、野菜を育てて販売もする。そして伝統野菜の種を守ろうとタネの会社まで立ち上げた。自身に食物アレルギーを持ちながら、こんなにも野菜の種を考え、行動し、そして冷静に論じていく高校生、すごいなと思います。またそんな彼を育て見守りてきた家族にも感心していまいました。
近い将来、採種を禁止する法律ができるかも知れないという。野菜を育ててタネをとり、そのタネでまた野菜を育てる。そんな当たり前の生命の輪廻を取り上げられてしまう怖いはなしだなと思うのですが私たちはそのことに無自覚に来てしまいました。私たち大人もこの食の根本問題に向き合わなければ・・・・。
「あずかりやさん」
-桐島君の青春-
大山淳子
ポプラ社
「あずかりやさん」の2作目。前作ではこのあずかりやさんののれんや預けられた自転車などの視点から、このお店に預ける人、預けられるものを描いてきましたが、この作でもお店で使われている文机やらオルゴールやらが語り手となったお話が登場します。
二つ目のおはなしは「青い鉛筆」、中学に入学した女の子が主人公。新しいクラスで仲良しグループが誕生し、その一人が欲しいと言った級友の筆箱の中の鉛筆を盗ってしまうところから始まる。障害をもった弟におかあさんは弟にかかりきり、満たされないものも持った女の子の心情をよく描いています。そんな弟が有名な童話「星の王子さま」を暗唱してしまう。その弟とあずかりやさんとのかかわりが出てきたりしてちょっといいなと思えるおはなし、印象的でした。
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