第1回の東京公演は1974年3月12日であった。
毎年のようにひらかれた東京公演だが、はじめて東京公演のはなしがあったときは驚きだった。田舎の合唱団が上京して演奏会を行うなど夢のような話である。東京公演はお金の面でも、移動・宿泊・会場のことなどマネジメントの面でも全て先生が負担され、私たちはただ行って唱えばいいという恵まれた演奏会だった。
私たちは前日に東京に向かい、高尾のユースホステルに宿泊した。翌日、全員で高尾山に登って散策し、ゆったりとした気分で京王線を一路会場である新宿の朝日生命ホールに向かった。古く壁もくすんで音響面でも心許ない地元の定期演奏会の会場と違い、きれいで音響も適度なホールでのうれしい演奏会だった。演奏会後は会場内でのレセプションがあり、夕飯代わりの小さいがしゃれたお弁当を持たせていただいて、その日のうちに電車に乗って帰ってきた。全てに至れり尽くせりで雲の上に乗ったような経験であった。