月別アーカイブ: 2020年6月

「疑心」

疑心「疑心」
-隠蔽捜査3-
今野 敏
新潮社

 アメリカ大統領来日に伴う警備体制に竜崎は方面警備本部長に抜擢される。その秘書として送られてきたのは魅力的な女性キャリアの畠山。竜崎の心に動揺が広がり、合理性の塊のような竜崎も感情に振り回され好ましく思えてくる。前作に引き続き配下のくせ者刑事:戸高が事態を好転させるきっかけをもたらしなかなかいい関係になってきました。

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「果断」

果断「果断」
隠蔽捜査2
今野 敏
新潮文庫

隠蔽捜査の続編です。
前作で降格左遷人事を受けた竜崎の今度の職は東京の大森署長。降格ではあっても今度は一国一城の主、この主人公が本領発揮できる環境のようです。この巻では拳銃を持った逃走犯の立てこもり事件で竜崎の下した決断に非難や責任が降りかかります。妻:冴子の入院もあり、合理主義者竜崎も心が揺らいだり弱気になったりと親しみが持てたりします。解説にもありますが、「俺は、いつも揺れ動いているよ。原則を大切にしようと努力しているだけだ」との竜崎の言葉、いいな!

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「本を守ろうとする猫の話」

本を守ろうとする猫の話

「本を守ろうとする猫の話」
夏川草介
小学館

 主人公:夏木林太郎は、幼い頃に両親が離婚し母は若くして他界したため、自宅を兼ねた古書店:夏木書店を経営する祖父に育てられた高校生。その祖父をも亡くしたところから話は始まる。林太郎は本好きではあるがその他にはこれといって特徴のない高校生、間もなく叔母に引き取られることになるのだが、それまでのあいだ学校を休み店の掃除など祖父のやっていた生活を始めているとそこに人間の言葉を話す猫が登場、本をすくう手助けを頼まれる。
学校を休む林太郎を心配して度々店を訪れる女学級委員長との関係もちょっと気になるなか、本離れが進む現代社会の危機感を感じつつ、本の世界本来の魅力を再確認させるようなお話しをファンタジックに、そして本好きオタクの主人公をちょっとかっこよく思えるように物語っています。

「神様のカルテ」シリーズでおなじみの夏川草介さんが新しい世界を拓いてくれたようです。

アナベル

アナベル1アジサイの一種、アナベルが咲いています。これは咲き始め。

 

アナベル2こちらはガクがぽつぽつと開きはじめ、

 

アナベル3ほぼすべてが開き、

 

アナベル4さらに進むと花は白くなっていきます。

 

アナベル5それら開き具合が様々なものが一度に眺められるのがいいですね。カラフルではないけれど、緑から白に変わっていくこのアナベル、いいな。

「居酒屋兆治」

居酒屋兆治

「居酒屋兆治」
山口 瞳
小学館

 山本周五郎が高く買っていたという作家:山口瞳の作品、気になっていました。「居酒屋・・」とうたっているけれど、どうやら舞台は焼鳥屋さん。そして時は昭和。この店に子ども時代からの仲間のような常連さんがやってきて織りなす人間模様。「居酒屋ぼったくり」のように次々としゃれた料理や酒が登場するのと異なり、主人公の不器用な生き方を描いているような作品。おとこのお話しという感じがしました。

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