「分離唱」によるハーモニーの教育(上)
音楽教育に光!
~ 私の人生を変えた一冊の本「耳をひらく」 ~
音楽教育をすればするほど、音楽ぎらいになっていく子どもたちを前に、心のまま、水の流れるごとく楽しめる音楽はないものかと思っていた筆者が、ある日手にした一冊の本は、佐々木基之著「耳をひらく」であった。
出合い
昭和五十三年四月三十日、日曜日。私は「人間づくりの音楽教育」という副題のついた一冊の本を買った。小学校の子どもたちのために何か役立つかも知れないと思ったので、他の数冊の本と一緒に買ったのだ。
それは佐々木基之という人が書いた「耳をひらく」という題名の本であった。家へ帰る途中の、電車の中で退屈しないためにと、ふと思いたって、近くの本屋へ寄ったのだった
が、この時に偶然買ったこの見知らぬ一冊の本が、その後の私の人生を変えてしまうなどということは、まったく考えもしないことだった。
本はとてもおもしろくて、次の日には読み終えてしまった、音感教育の方法についても書いてあったが、この時の私には、まだその方法の意味が、さっぱりわからなかった。
その方法は「分離唱」と言った。本に書いてあるところによると、この方法をとって行けば、どんなに楽譜が読めない人も、また音痴や声の悪い人も、たちまち合唱の仲間に入って楽しむことができるようになるというのだ。
そんなよい方法があるのだろうか。それが本当なら、うれしいことだ。私は読みながら、自分の生徒たちのことを思い浮かべていた。