月別アーカイブ: 2020年3月

「八月の太陽を」

八月の太陽を八月の太陽を
乙骨淑子 作
滝平二郎 絵
理論社

 1800年頃起きたアフリカ人とアフリカ人を祖先に持つ人々がフランスの植民地統治から解放され、奴隷状態からも解放される「ハイチ革命」を革命指導者トウセンを主人公に描いた作品。統治国フランスが、革命やその失敗、そしてナポレオンの時代へと激動する中で先を見据えたトウセンの忍耐力・判断力・指導力がよく描かれています。ここでも植民地支配や民族差別を知ることができました。そして民主化のための長い戦いも。

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醍醐山トレッキング

 

今回のウォークは「下部醍醐山トレッキング」。日蓮宗総本山:身延山久遠寺のある身延町にある醍醐山はスカイツリーと同じ高さ(標高)634mで一躍名を売り、登山道も整備されて登りやすい山になりました。身延線甲斐常葉駅をスタートし山頂を経て下部温泉駅ゴールのお手頃コースです。

 

01_集合甲斐常葉駅前に10:30集合、私は電車を避けてマイカーでここまで。まずはリーダーの挨拶、新型コロナウィルス騒ぎでこの日のことまでの開催の可否にゆれたことなど、それから天気予報が予報元によって違ったことなど。

 

02_川沿いスタートしました。から川沿いを上流方向へ、でもすぐに左折して登山道に入ります。

 

03_萬霊塔山道にはいる直前に、これは「萬霊塔」?

 

04_小休止

山道に入りましたU字型の底のような登山道は落ち葉がたまって、それを踏みしめてすすみます。

 

05_登る蛇行しながらも上りがきつくなってきました。

 

06_植林平らなところに杉か檜か綺麗に並べて植林されたところでの休憩。この日はこまめに小休止をとっていただきました。かつては畑だったところを、営農が困難となって植林したんでしょうね。

 

07_鳥打峠木製の標識がよく整備されていました。ここは鳥打峠、私たちは尾根道を歩いてきたのですが、かつてはこの尾根道と交差するように、下の部落から尾根越えをしていったんでしょうね。

 

08_間引き植林された林の中に伐り倒された太い幹がたくさん。これはどうやら太い木が育つように間引きしたんでしょうね。「間伐」ってこの作業のことをいうんでしょうか、それとも植林の間の下木を伐ることをいうのでしょうか?

 

09_登る今回のコースではきつい登り坂は三度ほど。以前に登ったことがあるというEさんの、「後で急登があるよ」という話を聞きながら「ここのことかな?」と何度も思ったのでした。

 

10_五老峰展望台五老峰展望台、見えるのは南東方向かな。正面に見えるのが五老峰です。

11_猿の腰掛け切り株に立派な猿の腰掛がありました。

 

12_共同アンテナこちらはどうやら共同アンテナ。左のボックスには「NHK」という表示がありました。山間の集落は個人のアンテナでは受信できる放送局が少なく、集落全体が参加する共同アンテナを山の上に立てて各家に配信。私の実家ではそのおかげで長野の放送も入るんですよね。

 

13_展望頂上間近の展望台。視界が開けて爽快なのですが、「こんなに木を伐っていいの?」

14_八ヶ岳を望むここからの展望、鮮明ではありませんが遠く八ヶ岳まで見渡せます。手前の白いのは市川大門のあたりの仏舎利塔。

15_頂上着きました、山頂。ここで昼食。この屋根の下には丸太のベンチ・テーブルがあり、記念スタンプも用意されていました。

16_若葉頂でも楓の葉がやわらかに開き始めていました。

17_ウグイスカズラこちらはウグイスカズラ。風にゆれて、高速シャッターでもぶれてますかね。

18_身延方面頂上から10分ほど歩くと展望台があり、これは6人ほどの有志で見に行きました。見下ろしているのは身延方面と富士川。

19_スミレスミレは登りはじめから山の上までよく咲いていました。

20_午後スタート午後の部スタート、暖かい陽射しを浴びながら落ち葉の上を。

21_下るでも急な下り坂になると落ち葉が滑ってかえって怖い。歩幅を狭く、ゆっくり、ゆっくり。

22_太子集落跡 大子(だいご)集落跡のすぐ上にあった石造物。人がいなくなった集落、崩れても補修されず寂しい。集落の中には廃屋が何棟か残っていましたが、痛々しくて写真は撮りませんでした。

23_杉林美林の中を下ります。

24_小さな祠かわいい祠がありました。表側には逆ハート形の切り込み。

25_橋を渡る こんな橋も何カ所かありました。その都度、一人づつ渡ります。この橋はまだ広い方。

26_花モモ下りきったところで色鮮やかにやまももが満開。

27_ホッと長い急な下り坂に膝が笑ってしまって、ここまでくるとみんなホッと笑顔。

28_国道身延から本栖湖に至る国道300号に出ました。こちらは身延方面。これから反対側、下部温泉駅に向かいます。

29_下部温泉入口下部温泉入口にかかる橋、赤い灯籠が並んで風情があります。そしてしだれ桜のお迎え。

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この橋の4つの橋柱は曲線的なデザインの中に桜・カエデ・螢・川魚と4種類の絵柄が彫り込まれています。いいな、こういうの。

 

 

31_下部温泉駅そして終点の下部温泉駅。心配された天候も穏やかにほぼ晴れていたのですが、なんと私たちの到着を待っていたように強い雨が降り始めました。ラッキーでした。

登山と言うより低い山、落ち葉の中を、いろいろな記憶が甦る山歩きでした。今では家畜舎の床に敷くために落ち葉を集める「きのはき」、集めた落ち葉を積み重ねて貯蔵しておく「きのはんや」なんていうのも死語ですね。子どもたちが「きのはんや」に飛び込んで遊んだんだけどな~。

リーダーさん、サブさん、楽しいコースを案内していただきありがとうございました。そしてご苦労様でした。

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「勿忘草の咲く町で」

勿忘草の咲く町で

勿忘草の咲く町で
~安曇野診療記~
夏川草介
角川書店

 「神様のカルテ」シリーズでお馴染み・夏川草介さんの新作。長野県松本市郊外にある民間病院を舞台に、本業お医者さんの著者ならではの若い看護師・月岡美琴と研修医・桂正太郎の物語。患者の高齢化で胃瘻や認知症・介護・看取りなど退院しても自分の生活に戻れるわけではない患者さんの治療のあり方、過重労働など地域の病院が抱える重い課題に正面から向き合い、その悩みが若い二人の物語の中に語られています。もちろん二人の関係にはちょっとワクワク。
「神様のカルテ」の主人公とも接点ができそうだったのですが、その楽しみは続編へ残したようです。と言うわけで続編も出してくれるんでしょうね、期待しています。

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「水曜日の手紙」

水曜日の手紙水曜日の手紙
森沢明夫
角川書店

 水曜日のことを書いて「水曜日郵便局」に送ると、その郵便局では集まった手紙をシャッフルして送ってくれた人へ転送してくれる。日々の生活に疲れた人、生き方に悩んでいる人が水曜日郵便局に手紙を送り、受け取った手紙でそれぞれの何かが変わっていく。人生が新しい方向に動き出す。そんな「いい話だな」と思える物語です。
こんな郵便局、あったらいいな。

「恋するハンバーグ」

恋するハンバーグ恋するハンバーグ
佃はじめ食堂
山口恵以子
角川春樹事務所

 東京下町佃島にあるシェフ:孝蔵と一子夫婦の洋食屋のおはなし。一流ホテルの厨房から独立して格好良く腕も立つ孝蔵と美人で人柄も良い一子、周囲の温かい人たちとお客様がかかわって、おいしくて愛される庶民的な洋食屋に育っていきます。駄菓子屋・ウルトラマン・国鉄のスト・ブルーコメッツ・大鵬・大阪万博、なつかしい昭和が次々と登場するのも嬉しい。
知らなかったのですが、これは「食堂のおばちゃん」シリーズの2作目。シリーズの作品を続けて読んでみようと思います。

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「熱源」

熱源熱源
川越宗一
文藝春秋

 今年の直木賞作です。 サハリン島(樺太)の先住民アイヌの人たちを中心とした物語。先住民のものだった土地(島)が日本の支配を受けたりロシアのものになったり、日露戦争の結果日ロで折半したり、そしてまた日本の敗戦でロシアの支配下になったりと大国の間で翻弄される。支配する側の文化が高いとされてその文化を先住民に押しつけ土地を取り上げていく、そんな理不尽さや先住民と言われる人たちの悲しさが綴られていきます。

先日、台湾の先住民族がやはり日本や中国の支配を受けるようになっていく映画「セデック・バレ」をみました。以前には「ダンス・ウィズ・ウルブズ」という映画がありましたが、ここでもアメリカの先住民が移住してきた白人に土地を追われていく様が描かれていました。「リトル・トリー」という小説もありましたね。かつて西部劇を見て白人が正義、先住民が悪のような表現を何も考えずに見ていましたが、征服される側から見た征服者の理不尽な論理を伝えるのがこれらの作品の共通のテーマ。この「熱源」も読みごたえがありました。

「年とったばあやのお話かご」

年とったばあやのおはなしかご年とったばあやのお話かご
ファージョン作
石井桃子訳

 年とったばあやが3歳・5歳・7歳の4人の子に寝室で繕い物をしながらお話をしてくれます。ばあやが以前面倒をみてあげた子どものお話。時には何百年も前の物語の中の人物の子守りであったり、歴史上の人物の子守りであったり。この婆やの年齢はいったいいくつなんでしょうか?こんなばあやが子どもにするほら吹き話、石井桃子さんの名訳で楽しく読めます。

「甘夏とオリオン」

甘夏とオリオン甘夏とオリオン
増山 実
角川書店

 主人公:甘夏は夏之介門下の駆け出し女性落語家。師匠の突然の失踪にも兄弟子二人とともに噺家の家を守っていくことに。下宿している銭湯で師匠を待つ深夜の寄席がはじまります。師匠と同門の噺家の協力で三人の落語も成長の気配。でもこの本では完結していない感じ、続編が出るのでしょうね、きっと。

「合言葉は手ぶくろの片っぽ」

合言葉は手ぶくろの片っぽ合言葉は手ぶくろの片っぽ
乙骨淑子 作
浅野竹二 画

 神戸港を出港しカナダを目指す貨物船ぺがさす丸に乗り込む若者二人、一人はコックの洋一、そしてもう一人は新入り船員の六平。出港して間もなく密航の若者一人の一匹の犬が出現。主人公の二人を含む若い船員数人がこの一人と一匹の密航を助ける物語。密航がばれないかとハラハラしたり、台風の大嵐の中の航海があったり、スリル満点の物語です。

ゲド戦記の名訳で有名な清水真砂子さんが推奨する乙骨さんの作品です。

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