八ヶ岳南麓の北杜市には蔵に数多くの鏝絵が見られますが、なかでも有名なのは須玉町の津金。しかし私はまだ津金の鏝絵は一部しかみておりません。ですから本場を後回しにして津金以外の町内に点在する鏝絵の数々を紹介したいと思います。
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若神子1
「松に鷹」。松は幹・枝のみで葉は描かれていません。かつて須玉町で一番賑やかだった若神子本通りの裏通りにあります。
若神子2
「波打ち際の亀と月」、色づかいもありきれいです。先ほどの鏝絵とは反対側の裏通りにあります。
若神子3
かつては商店街だった本通りを歩いていて見つけました。通りからは少し引っ込んだところ。蔵の両側に絵柄の鏝絵、一方は「波」かな。そしてもう一方は白を下地にした「松に鷹」、明るい雰囲気が印象的です。
家主さんの話も聞くことが出来ました、地元(若神子)の左官さんによるもの。100年ほど前の作品が色あせたので、30年ほど前に手を入れてもらったそうです。その時蔵を立て直そうかとも考えたのだけれども、「今は蔵を造る大工さんがいなくなっているんだよ」と言われて今までの蔵に手を入れたのだそうです。
若神子4
商店街の呉服屋さん。道路沿いの看板の陰で見落としていましたが、反対側の路地から歩いていって発見しました。余り見掛けない趣の「松に鷹」。
境の沢1
七里ケ岩の上にも須玉の町域があります。滅多に通ることのないこの境の沢部落にも鏝絵を見つけました。「紅葉と松と鷹」、他でも同様な図案がありましたが楓の葉は2色、3色? 松の葉も繊細、ここのは完成度が高い感じがします。
境の沢2
「波打ち際の亀」。若神子のものと似通った構図、同じ職人さんの作品でしょうか。でもこちらは月が描かれていません。
大豆生田1
少々色あせてはいますが、何色か組み合わせた「松に鷹」です。こちらの松には葉も描かれています。
大豆生田2
将棋の駒を描いた鏝絵は珍しい。蔵主さんが将棋好きだったのでしょうか、それとも左官さん?王将や飛車・角でなく金将を描いているのもしぶい。そういえば「金」の文字もちょっと変わっています。
大蔵新田1
私がはじめて見つけた鏝絵、比較的新しい蔵です。単色で仕上げた「松に鷹」。周囲の装飾にもこだわりが見えます。
大蔵新田2
ちょっと古いお蔵。波打ち際の亀、そして太陽でしょうか月でしょうか。空が暗いので月かな。赤が入ると映えますね。
大蔵1
こちらは蔵ではなく住まいの壁に鏝絵がありました。かなり大きな鏝絵。「松に鷹」、そして左には山の連なり?
大蔵2
道路から奥まったところ、うっかりすると見逃してしまいます。これも「松に鷹」、でも松の葉はパターン化してますね。そして色合いも今まで見たものとはちょっと違う感じ。今まで見てきたのとは作者が違うのでしょうか。
藤田1
こちらも「松に鷹」、翼を閉じたおとなしい鷹です。松の葉も見えませんが、周囲はていねいに装飾されています。
藤田2
これは家紋ではないような気がするのですが、何でしょう?
藤田3
竹にとまっているのは雀でしょうか?珍しい絵柄です。道路を歩いてはとても発見できない鏝絵、「我が家にもあったよ」と家主さんに教えていただきました。このお宅の屋号は「油屋」、電灯が普及する以前に灯明の油を商っていたのでしょうか。
藤田4
最後に発見した鏝絵。扇形の丑鼻に、「松と楓に鷹」が描かれています。個人宅に入っていく私道と思って歩かなかったのですが、最近になってこの先の竹林を抜けて農地へ出るための公道だとわかり、歩いて発見しました。
「松・楓に鷹」。松葉の緑と楓の赤がカラフルです。でも、老朽化していたこの蔵は残念ながらなくなってしまいました。
小倉3
こちらはかつてのお菓子屋さん「風月堂」。和菓子やパンを作って地域に販売していたそうですが、戦争で砂糖など物資が乏しくなって、しかも鍋も金属として供出してしまい菓子も作れなくなったなんていうおはなしを伺いました。3階建ての立派な建物の2階の壁面に立派な鏝絵の看板があります。これは大作!
かつてすぐ道向かいに左官さんがいて、その方の作だそうです。
上の2枚はこの家の蔵のもの、やはり「風月堂」と店の名を入れた鏝絵も珍しいのではないでしょうか。
東向1
ここにも将棋の駒がありました。今度は王将、正統派の将棋ファン?
東向2
こちらは鶴、長寿を願っているのでしょうか。バックグラウンドが肌色なのも珍しい。拡大するとわかりますが頭の上にも紅がのっています、丹頂鶴ですね。
江草1
ひとつの蔵の両側に鏝絵がありました。「松に鷹」と「波間の亀に鶴」。鏝絵の歴史の浅い左官さん?
江草2
こちらは通称「田木畑木」と呼ばれる大ケヤキの根小屋神社の道向かいにあります。「松に楓に鷹」。やはり楓の紅葉と松の青葉を色使いしています。
江草3
ここは県道からかなり入った集落。青を基調にして、鮮やかな「龍」。
比志1
増富温泉に行く県道沿い、温泉のちょっと手前の集落にありました。「大黒」、津金の明治校舎内に展示されている鏝絵の下絵にそっくり。これは間違いなく堀内秋男さんの作品です。
小尾・彫刻
これは鏝絵ではないけれど、精密な彫刻を施した蔵があったので撮りました。
小尾1
簡素に作られたウサギの鏝絵、珍しい。ウサギは多産のことから、安産と子孫繁栄のシンボルなのだそうです。
小尾2
これはまた随分とシンボル化した他では見ないタイプの大黒様。