図書館で「ゲド戦記」が話題になりました。そうすると図書館の方が薄い一冊の本を取り出してすすめてくれました。わずか60頁ほどの、
「『ゲド戦記』の世界」清水真砂子著
です。2006年の講演をもとに編集された本です。早速立ち読みを始めると、すぐに清水真砂子さんのお話の世界に引き込まれてしまいまいした。
ゲド戦記を読んだとき、やはりその世界にすぐに引き込まれました。翻訳を感じさせない、日本語作家以上にすばらしいことばの世界かもしれません。単なる翻訳でなく、日本語にするときのことばを練りに練った翻訳なんだろうなと思っていたのですが、この本では著者のことばへのこだわりが語られています。
「小さいときからとっても言葉が好きだった。素敵な言葉に会うともう飛び上
がるほどうれしかった。新しい言葉にであうと、それがやっぱり、うれしくて
うれしくて。・・・・」
と語っていますが、そんなこころの世界があるんだなと感心しまいます。
「『ゲド戦記』との30年も、ほんとうに、言葉を探し、言葉と格闘し、言葉と戯
れ、言葉に笑い、言葉におびえ、言葉と和解し、という日々だったような気が
します。」
という文章があり、この章の題は「言葉探しの30年」でした。
「登場人物が成長にともなってことばが変わっていかなければいけない。」
とか、
「この登場人物のことばは日本語作家の誰に語ってもらおうか。」
などと考え、何人かの作家とその著書も紹介されています。
自宅でこの本を読み、家族でこの訳者の言葉の世界を話題にしていると、ことばの世界も素晴らしい広がりを感じさせてくれるものだなと思ってしまいます。