「熱源」

熱源熱源
川越宗一
文藝春秋

 今年の直木賞作です。 サハリン島(樺太)の先住民アイヌの人たちを中心とした物語。先住民のものだった土地(島)が日本の支配を受けたりロシアのものになったり、日露戦争の結果日ロで折半したり、そしてまた日本の敗戦でロシアの支配下になったりと大国の間で翻弄される。支配する側の文化が高いとされてその文化を先住民に押しつけ土地を取り上げていく、そんな理不尽さや先住民と言われる人たちの悲しさが綴られていきます。

先日、台湾の先住民族がやはり日本や中国の支配を受けるようになっていく映画「セデック・バレ」をみました。以前には「ダンス・ウィズ・ウルブズ」という映画がありましたが、ここでもアメリカの先住民が移住してきた白人に土地を追われていく様が描かれていました。「リトル・トリー」という小説もありましたね。かつて西部劇を見て白人が正義、先住民が悪のような表現を何も考えずに見ていましたが、征服される側から見た征服者の理不尽な論理を伝えるのがこれらの作品の共通のテーマ。この「熱源」も読みごたえがありました。

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