春合宿に参加して H.S.
農鳥の雪が溶け始め、山肌に白鳥が舞うようになると、甲斐国の本格的な春が始まる。野や山で、柔らかい草木の芽がふき出し始めている。
そして我々のハーモニーの芽もふき出し始めた。上級生が卒業してしまい少しばかり淋しい4日間の合宿ではあったが・・・・。ハーモニーは不思議な力を持っている。美しいハーモニーの中に浸っていると、身体の余計な力がすっと抜けて、みんなと一つになっているような気がする。そして口からは、自然と歌が出てくるのだ。なんとも不思議なものだ。
春合宿は音取りが多いせいもあって、ハモることがあまりないので、とりわけ、仕上げの段階に入った曲を歌う時は、やはり胸がワクワクしてくる。特に印象に残ったのが、Es-durの「ちちいろの霧にけぶる」で始まる“夢の園生”である。俺はEs-durやF-durの響きで流れる曲は大変好きだ。過去の思い出には、卒業生のKさん達と歌った“オザ・クルーム”という男声曲がF-durで、明るく澄み切った響きで曲は流れていく。特に梨大のEs-durやF-durは、一種独特の美しい響きを持っている。このハーモニーに浸っていると全てを忘れてしまう。
まるで合宿前のだれ切った生活が嘘のようであり、合宿後の現実を思うとうんざりしてしまう。こんな中で4日間は過ぎてしまった。また合宿の楽しみと言えば、好きな時に気の合った仲間とハモれることだ。いつでも少人数アンサンブルの楽しめる機会なのだ。以前は、カルテットをつくって歌っても、上級生の仲間に入ってひっそりと歌っていたが、この春合宿からは、俺たちが最上級、少人数アンサンブルの楽しさ、ハーモニーのすばらしさを、下級生にも、もともっと広めたいと思っている。そこら中で、気の合った仲間同士がハモっている・・・なんてなったら素晴らしいと思う。時々思うが、俺みたいな男でも、自分は一人だなあと思うことがある。でも合唱している時は、やっぱり自分は一人だけれど一人でないようだと思う。悪い声でも小さい声でも、ハーモニーに溶け込んでいる以上、どの人の声も必要とされてくる。この俺の声でさえも、と思うと、一生懸命聴いて、一生懸命無心に歌いたくなってしまう。そしてよい音楽には理屈抜きで感動する。この春合宿でも新しい発見をしたようだ。最後に、役員の皆様大変ご苦労様でした。