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「沢村貞子という人」

沢村貞子という人

「沢村貞子という人」
山崎洋子
新潮社

 女優:沢村貞子さんのマネージャーを長年務めた著者が綴った沢村さんの素顔。沢村さんの人柄・生き方などいいなと思いました。周囲への気遣い、物事の割り切り方、おしどり夫婦ぶり、近づいてくる死への向き合い方、こんなふうに生きられるんですね。山崎さんの文章もいいなと思いました。

「?(疑問符)が!(感嘆符)に変わるとき」

疑問符が感嘆符に変わるとき

「?(疑問符)が!(感嘆符)に変わるとき」
小国綾子
汐文社

 特に印象的で気に入ったのは詩人長田弘さんの、

「詩にできるのは半分だけ。
書くことは、言葉にできない残り半分を大事にすることでもあるんです」

という言葉でした。どうしても他人(ひと)に言えない書けないこともあっていいんだ、時を待ってまた表現できるかも知れないなんてことを考えました。私にとっては嬉しいことばです。
作者小国さんの生き方、見事ですね。いい本だなと思いました。

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「スコーレNo.4」

スコーレNo.4

「スコーレNo.4」
宮下奈都
光文社

 骨董品店を営む父と母・祖母・妹二人と暮らしている麻子、自由奔放でしっかり自己主張ができる一つ違いの妹:七葉に対し、自身はいつも内向きに考え葛藤を抱える中学一年生。そんな麻子にも気になる男子生徒が現れる。中学にはじまり高校・大学そして社会人と悩み苦しみながら成長していく主人公の心をていねいに書きつづったおはなし。女性好みのおはなしかなと思いつつも、読み終わった印象は「よかったな~!」と思える一冊。

「灯台からの響き」

灯台からの響き

「灯台からの響き」
宮本 輝
集英社

 妻を亡くして店を休業し蓄えを削る生活を続けている中華そば屋の康平は手にした本から亡き妻宛の大学生の葉書を見つける。見ず知らずの若者から便りに妻は「あなたにはまったく覚えがないが・・・・」と返信を書きそれを康平が投函したのだったが、その返信はなかった。そんな葉書を何かのメッセージのように康平がいずれ読むであろう本の間に挟んでおいた妻の意図は・・・・。康平の謎解きがはじまる。
仕事に追われあまり会話もなかった二男一女の子どもたち、父から近づこうとする気配もあるが、いずれも独り立ちしている子どもたちも仕事を止めてしまっている父を見守っていてこころ温まる家族の物語でもあります。

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「終わらない歌」

終わらない歌「終わらない歌」
宮下奈都
実業之日本社

 「よろこびの歌」の続編、前作から3年後のクラスメートのその後を描いている。バイオリニスト御木元響を母に持つ玲は声楽で音大に進学、しかし才能に秀でた同級生の中でもがいている。高校時代にクラス合唱でピアノ伴奏をした千夏はミュージカルのを目指し迷い無く突きすすんでいるように見えるが、やはり悩み苦しんでもいる。ソフトボールのプレーヤーとしての道は閉ざされた早希はトレーナーの道へ、そんな彼女にも音楽を通した出逢いが訪れる。短大を卒業、就職北陸へ一人移り住むあやにも心に残る歌から新たな人とのつながりが。そんなかつてのクラスメートと絡み合いながら、全編を通しての主人公:玲が歌うよろこびを見いだしていく。読んでいる読者も主人公と一緒に音楽を通してこれからそれぞれの未来が開けていくのを感じられるおはなしでした。
作者の宮下奈都さんも音楽好きなんでしょうね。

「わたしの三面鏡」

わたしの三面鏡「わたしの三面鏡」
沢村貞子
朝日新聞社

 友人にすすめられた本書、図書館で予約して読んでみました。

作者沢村さんは言わずと知れた名脇役女優さん。その沢村さんの家庭生活、そして老いを迎えての心を綴ったエッセイ集。いい語り口の中に沢村さんの人柄がじんわりと伝わってきます。私たちも高齢者の入口まできてしまいましたが、こんなふうに心穏やかに自己の老いに向き合って行けたらいいなと思います。

三面鏡とは主婦として、女優として、そしてもの書きとしての三様の沢村さんを描いているという意味合いのようです。沢村さんのエッセイ、また読んでみたいと思います。

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「去就」

去就(隠蔽捜査6)

去就 隠蔽捜査6
今野 敏
新潮社

 今回は竜崎が署長を務める大森警察署管内で女性連れ去り事件が発生。被害者はストーカー男に会いに行った女性、それに連れ添った男は殺害されれ発見される。大森署に捜査本部が置かれ、竜崎はその副本部長となるが・・・・。
建前でなくホンネで正義と合理性を求める竜崎に、煙たく思っていた周囲の面々も次第次第に竜崎のファンになっていく。誘拐殺人事件の解決するも、さらに竜崎に組織内での危機が訪れる。
今回も一気読み、そして読後は気分爽快。シリーズ続編を更に読み進めたいと思います。

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「あきない正傳金と銀(9)」

あきない正傳金と銀9

「あきない正傳金と銀(9)」
高田 郁
角川春樹事務所

 生み出した新しい新しい小紋染めで一層の飛躍を期した五鈴屋江戸本店。しかしその斬新な型紙を幸の妹:結に持ち去られてしまう。商売敵となった結と音羽屋により五鈴屋はさらなる危機が訪れる。店の女主人として次々と押し寄せる危機にも知恵を絞って乗り越えていく幸の物語、今回も読みごたえがありました。

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「アルルカンと道化師」

アルルカンと道化師

「アルルカンと道化師」
池井戸潤
講談社

 東京中央銀行を舞台にした人気の半沢直樹シリーズ最新作。
今回の半沢は大阪西支店の融資課長、そこを舞台にした取引先で歴史ある美術系出版社である仙波工藝社のM&A(企業買収)話です。銀行の論理で強引にM&Aを進めようとする支店の上司や大阪営業本部、それから業務統括部長に対し、買収から会社を守ろうとする半沢達融資課チームの奮闘。今回は美術品を絡めたおはなしで、理不尽な圧力に屈せず顧客を守り正義を貫くいつもながらの痛快なストーリー、一気読みでした。

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「よろこびの歌」

よろこびの歌

「よろこびの歌」
宮下奈都
実業の日本社

 名バイオリニストを母に持つ御木元玲は声楽で目指していた音楽大学の付属高校に入学できず、数年前に新設された女子高校に進学する。周囲との関わりをもたず高校生活を送ってきたが、2年となりクラス替え、そして秋、玲はクラス対抗の校内合唱コンクールの指揮者に指名されてしまう。コンクールは決してうまくいったわけではないが、これを機に玲のまわりが動き出す。

主人公が章ごとに変わり、クラスメートそれぞれが抱えているものがあり、それぞれがこの合唱を機に関わりをもちはじめ、音楽を通してつながっていくおはなし。いいおはなしでした。