「沢村貞子という人」
山崎洋子
新潮社
女優:沢村貞子さんのマネージャーを長年務めた著者が綴った沢村さんの素顔。沢村さんの人柄・生き方などいいなと思いました。周囲への気遣い、物事の割り切り方、おしどり夫婦ぶり、近づいてくる死への向き合い方、こんなふうに生きられるんですね。山崎さんの文章もいいなと思いました。
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「灯台からの響き」
宮本 輝
集英社
妻を亡くして店を休業し蓄えを削る生活を続けている中華そば屋の康平は手にした本から亡き妻宛の大学生の葉書を見つける。見ず知らずの若者から便りに妻は「あなたにはまったく覚えがないが・・・・」と返信を書きそれを康平が投函したのだったが、その返信はなかった。そんな葉書を何かのメッセージのように康平がいずれ読むであろう本の間に挟んでおいた妻の意図は・・・・。康平の謎解きがはじまる。
仕事に追われあまり会話もなかった二男一女の子どもたち、父から近づこうとする気配もあるが、いずれも独り立ちしている子どもたちも仕事を止めてしまっている父を見守っていてこころ温まる家族の物語でもあります。
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「よろこびの歌」の続編、前作から3年後のクラスメートのその後を描いている。バイオリニスト御木元響を母に持つ玲は声楽で音大に進学、しかし才能に秀でた同級生の中でもがいている。高校時代にクラス合唱でピアノ伴奏をした千夏はミュージカルのを目指し迷い無く突きすすんでいるように見えるが、やはり悩み苦しんでもいる。ソフトボールのプレーヤーとしての道は閉ざされた早希はトレーナーの道へ、そんな彼女にも音楽を通した出逢いが訪れる。短大を卒業、就職北陸へ一人移り住むあやにも心に残る歌から新たな人とのつながりが。そんなかつてのクラスメートと絡み合いながら、全編を通しての主人公:玲が歌うよろこびを見いだしていく。読んでいる読者も主人公と一緒に音楽を通してこれからそれぞれの未来が開けていくのを感じられるおはなしでした。
作者の宮下奈都さんも音楽好きなんでしょうね。