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「あかね空」

あかね空「あかね空」
山本一力
文藝春秋

 映画「あかね空」を見て原作を読みたいなと思っていました。

京の豆腐屋で修行をし江戸へ出てきた栄吉が長屋でおふみとともに豆腐屋をはじめて、やがて店を大きくしていき二代目に引き継いでいく物語。源治・おふみ父娘をはじめ長屋の人たちや一人息子を誘拐された豆腐屋の相州屋夫婦の助力など人のつながりの中で商売を太らせていく。栄吉・おふみ夫婦は二男一女に恵まれるが、子の成長に伴い家族に不和も・・・・。

映画にはほとんど登場しなかったと思うのですが、次男の伴侶となる女性の存在もまたいいなと思いました。

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「櫓太鼓がきこえる」

櫓太鼓がきこえる「櫓太鼓がきこえる」
鈴村ふみ
集英社

 大相撲新米呼び出し:篤の物語。篤は高校を不登校の末中退してしまい両親との関係も冷えてしまった末に、大の相撲ファンである叔父のすすめで大相撲朝霧部屋の呼び出し見習いとして入門した。我々の多くが知らない大相撲の下積みの世界、まだ関取も誕生していない弱小部屋、そこにもけがに見舞われたり悩んだり、ちゃんこ番をしたり引退していく兄弟子がいたり、そして裏方とも言える呼び出し仲間。そんなところでもそれぞれの人の物語があり引き込まれてしまいます。
大きな挫折を味わった主人公が新たな世界を歩き出し、この世界で生きる地歩を固めて将来が開けていくような一年間のお話、よかったな。

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「人生で大事なことはみんなゴリラから教わった」

みんなゴリラから教わった

人生で大事なことはみんなゴリラから教わった
山極寿一
家の光協会

 著者は霊長類の研究者で、アフリカに渡ってゴリラの群れに近づき、信頼関係を築いて観察した結果としてこの本を著している。ゴリラはことばは持たないが遊び好きで笑ったりもする。家族社会をつくり平和を愛し争いには仲裁に入るなど、序列社会をつくってしまうサルとは随分性格が異なるという。身体にハンディがあっても決していじめは起こらず、助け合い、ハンディを持ちつつも立派な大人に成長していくという。我々人間が見失ってしまったかもしれないよい意味の「人間らしさ」をゴリラの生活から学ぶことができる。

「人形の旅立ち」

人形の旅立ち

「人形の旅立ち」
長谷川摂子
福音館書店

20~50ページ程の短編5作品を収めた本。

はっきりとは書いてないのだけれど、作者の子ども時代の心の内を描いた作品なのだろうな。子どもらしい思いこみや妄想、ときには怖いもの見たさも入り交じったような思い出、そして主人公をとりまく情景、なんていいんだろうと思います。第2作「椿の庭」では主人公が柿の木に登って身を潜める場面が出てくるのですが、お尻の下から伝わってくる湿り気、そこで蕗の強い匂いが立ちこめている情景など、読み手にもツーンと匂ってきそうな感覚を覚えてしまいました。

長谷川作品、また読んでみようと思います。

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「ヴァン・ショーをあなたに」

ヴァン・ショーをあなたに

「ヴァン・ショーをあなたに」
近藤史恵
東京創元社

 下町のフレンチレストラン:「ピストロ・パ・マル」を舞台にしたシリーズ2作目。このシリーズは現在第3作まで出ていますが、どうやら逆順に読み始めてしまいました。でもそれには関係なく面白く読めてしまいます。
今回もピストロ・パ・マルに客として来る人物の謎解きが4話、料理を絡めたシェフの謎解きのお話し。料理も謎解きも凄腕のシェフが今回は厨房スタッフの志村さんに叱られているところから物語はスタート、4話目ではシェフの恋のお話し?おたのしみに。残りはシェフのフランスでのフレンチ修行中の出会った人が抱える謎を解くお話しが3話。いずれも出会った人の側の視点でシェフの若き頃が語られていく構成がまた面白い。
残りはシリーズ1作目、これも読まなければ。

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「ペットねずみ大さわぎ」

ペットねずみ大さわぎ

「ペットねずみ大さわぎ」
フィリパ・ピアス
高杉一郎訳

 主人公:ビルは母・義父・妹2人と暮らす少年。友だちからもらい受けたジャービル(ねずみ)2匹をこっそり飼い始め、それが父母に見つかってしまう。兄妹が可愛がるジャービルを母は何とか処分(?)しようとする。そんなジャービルをめぐる家族の思惑とそれによっと巻き起こる事件が面白く描かれている。

作品中ではジャービルに指を噛まれてしまう場面も何度か登場します。病原菌を媒介するような話もあり日本ではねずみを飼うという生活はあまり考えられないのですが、イギリスではペットとしてポピュラーな存在なのでしょうか。そんなことも考えながら、楽しく読了しました。

「清明」

清明

「清明」
隠蔽捜査8
今野 敏
新潮社

 シリーズ8作目の最新作。前作までは警視庁大森警察署長だったキャリアの竜崎、一国一城の主で署が竜崎流の合理主義が浸透しはじめ、ここでの人のつながりも面白くなったところでしたが、今作では人事異動で神奈川県警刑事部長となります。新天地でどうなるんだろうと思いましたが、幼なじみの伊丹警視庁刑事部長との連携、大森署時代のつながりある人も絡んで事件に取り組みます。事件は外国人がらみそして秘密主義の公安がらみ、ここでも竜崎流を貫いて小気味よく事件が解決に向かいます。
シリーズはまだまだ続くんでしょうね。新たなステージでの竜崎の活躍、これからも楽しみです。

「そしてねずみ女房は星を見た」

そしてねずみ女房は「そしてねずみ女房は星を見た」
清水眞砂子
テン・ブックス

 「大人が読みたい子どもの本」という副題がついたこの本、ゲド戦記の翻訳で有名な清水眞砂子さんによる児童文学作品の紹介です。紹介されているのは、

ごきげんいかが がちょうおくさん
グレイ・ラビットのおはなし
ねずみ女房
十一歳の誕生日
愛について
ゼバスチアンからの電話
片手いっぱいの星
ベーグル・チームの作戦
お話を運んだ馬
注文の多い料理店
人形の旅立ち
第八森の子どもたち

の12作品。この紹介を読んでいるとどれも読みたくなります。今回は紹介文を読んだ後その作品を図書館に予約、現在4冊目に挑戦中。こんな読み方もいいものです。

「棲月」

棲月

「棲月」
今野 敏
新潮社

 鉄道会社のシステムがダウンして運行がストップ。警視庁大森署長の竜崎はいち早く署員を情報収集にあたらせる。続けて管内に殺人事件、そして銀行のシステムダウンがたてつづけに発生。警視庁内の管轄意識・セクト主義との摩擦が生じる中、自身の広い視野と合理主義で事件解決に向かって行動していく竜崎の働きぶりが今回も楽しめます。冷徹であるかのようなキャリア組エリートの竜崎が、大森署長という現場で捜査員の勘も信じ始めたり人のつながりを感じ始め、今までにない人間臭さのようなものが生まれてきている自分に動揺する姿もまたいいなと思いました。

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「がちょうおくさん」

がちょうおくさん「ごきげんいかが がちょうおくさん」
「おっとあぶない がちょうおくさん」
ミリアム・クラーク・ポター作
まつおかようこ訳
こうもとさちこ絵

 清水眞砂子さんが「大人が読みたい子どもの本」として紹介しているこの本、そしてその続編です。動物村に一人暮らしするがちょうおくさん、何かとドジで抜けています。でもそんながちょうおくさんを受け入れてつきあっている村の人たちならぬ動物たちが織りなすちょっとお騒がせなおはなし集。笑えてしまいます。

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