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「ながい坂」(上・下)

ながい坂ながい坂(上・下)
山本周五郎
新潮文庫

下級武士の家に生まれた小三郎(後、三浦主水正)は、身分の違いから体験した理不尽な事件から一念発起して上士が通う尚功館に入学する。文武に才能を開花させ、異例の出世を遂げるが藩内の政争にも巻き込まれていく。代々の城代家老の滝沢家に生まれ才豊かで将来を嘱望されていた荒雄(後、兵部)の挫折と対照的に描かれている。藩内の名門:山根家の男勝りの娘:つるとの関係もまたおもしろい。

読みごたえのある山本周五郎最後の長編です。

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「はじめての日本現代史」

はじめての日本現代史はじめての日本現代史
- 学校では“時間切れ”の通史 -
伊勢弘志・飛矢崎雅也
芙蓉書房出版

鎖国していた江戸時代から奇跡的な近代化を遂げ欧米の強国の植民地化から免れた日本があの愚かな戦争に向かって突きすすみました。その近代史こそ最も学ぶべき歴史だと私も思うのですが、筆者が表題に掲げているように「学校では“時間切れ”の通史」として省略されたり駆け足で通り過ぎているのが歴史教育の実情です。だからこそ大人になって改めてこの時代の歴史を眺めることには意義深いものがあると思うのです。この本で取り上げているのは第一次世界大戦後から。この時代の指導者達は残念ながら世界の情勢を把握できていなかったなと、非常に見通しが甘いまま戦争に突きすすんでいったのだなと思いました。

さらに終戦から安倍内閣までを解説しています。当初の日本が再び軍事化するのを防ぐ占領政策が、冷戦構造下で求められる日本の役割が変わったのをはじめとして、世界情勢の変化とアメリカの政権の変遷などに振り回されて来たことが理解できました。私の意識にあるのは佐藤内閣以後ですが、「私が生活してきた社会はこういう流れの中のものだったんだ」と感心してしまいます。
受験を考えなければ最も大事な現代史、みなさんも紐といてみませんか。

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「草雲雀」

草雲雀草雲雀
葉室 麟
実業之日本社

 江戸時代の武家を題材にした物語。栗屋清吾は剣の腕は立つが栗屋家の三男坊で部屋住みの身分。道場仲間の山倉伊八郎も同じような身分だが、その伊八郎に実父の後を継いで藩の筆頭家老にという話が持ち上がる。清吾は伊八郎に用心棒を頼まれ、二人で運命を切り開いていく物語。軽い読み物風ではありますが清吾の実直さと伊八郎の剛胆さですすむはなしは痛快です。

「この嘘がばれないうちに」

この嘘がばれないうちにこの嘘がばれないうちに
川口俊和
サンマーク出版

前作の「コーヒーが冷めないうちに」は昨年映画化されるほど好評だったんですね。その続編です。
喫茶店「フニクラフニクラ」、そのある座席に座ると出されたコーヒーが冷めるまでの間タイムスリップして人に会うことができる。

第1話『親友』22年前に亡くなった親友に会いに行く男の話
第2話『親子』母親の葬儀に出られなかった息子の話
第3話『恋人』結婚できなかった恋人に会いに行く男の話
第4を『夫婦』妻にプレゼントを渡せなかった老刑事の話

いずれもじんわり「読んでよかったな!」と思えるミニストーリー。これらの話の中で店で働く数(女性の名前)やその従兄妹:店主の父娘の抱える過去も少しずつ解きほぐされていきます。
今作もおすすめ。

「静かな木」

静かな木静かな木
藤沢周平
新潮社

短編集で、下級武士の家を舞台にした「岡安家の犬」・「静かな木」・「偉丈夫」の3作を収録。
1作目は家族揃って犬が大好き、飼い犬を可愛がっている岡安家。その飼い犬を巡って友人との諍い、でも最後はちょっと笑えてしまうお話し。2作目は隠居老人が家族の危機をなんとかしようと静かに、奮闘するお話し。「三屋清左右衛門残日録」を思わせるような短編でした。

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「必ず、愛は勝つ!」

必ず、愛は勝つ!

必ず、愛は勝つ!
車イスサッカー監督羽中田昌の挑戦
戸塚 啓
講談社

正月の選手権大会に4年連続ベスト4、うち3回準優勝と輝かしい時代の韮崎高校サッカー部で3年間国立競技場でプレーした羽中田さん。その後交通事故で車イス生活となってしまったが、それでもプロチームの監督を目指した実録。先の見えない中でもポジティブな生き方を貫く姿、それを支える家族、多くのサッカー関係者の支援。車イス監督は知っていましたが、そこまでの物語はじめて知りました。

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「天翔ける」

天翔ける天翔ける
葉室 麟
角川書店

幕末に名君と言われた福井藩主:松平春嶽の物語。時代物作品の多い著者ですが、実在の人物を歴史に則って書いている感じで今まで呼んできた作品とはちょっと趣が違う感じがします。でも、西郷隆盛を描いた「大獄 西郷青嵐賦」とは共通点があるかな。史実をよく調べて、淡々と語り描いている印象です。

読む前の私の知識は「維新の頃松平春嶽という人物がいた」という程度、この人物の維新の頃どう存在しどう働いたのか、はじめて知ることができました。昨年は大河ドラマ「西郷どん」もありました。同じ時代を別な視点で眺めることができたように思います。15代将軍の徳川慶喜像もまた面白い。

葉室さんの文章、私は好きです。西郷の死と共にこの人の一生もスッと収めてしまったような終わり方、改めて西郷さんはこの時代を代表する人物だったんだなとも思いました。

「チキンラーメンの女房」

チキンラーメンの女房チキンラーメンの女房
安藤百福発明記念館 編
中央公論新社

今放送されているNHK朝ドラ「まんぷく」のモデルとなっている女性:安藤仁子をインスタントラーメン・カップラーメンを開発した夫:百福とともに一生をたどって紹介する本です。ドラマに登場する人物や事件などが、これは史実、これは脚色と確認しながら読み進めるのも面白いものです。ドラマが続いている間に読まれてはいかがでしょう。

「料理家ハンターガール奮戦記」

ハンターガール料理家ハンターガール奮戦記
ジビエの美味しさを知らないあなたへ
井口和泉
朝日新聞出版

先日TVでジビエ肉を使ったカレー(だったかな)を出す店が紹介されていました。その店主は若い女性。その後図書館でこの本を見つけたのです。「あー、あのときの女性の本」と興味を惹かれ借りてきました。

子どもの頃、我が家では乳牛を2頭飼っていました。子が産まれたのを何度かみました。今になって改めて、子を生ませて子を引き離して牛乳を搾取していたんだなと思います。そんな子牛を業者が引き取りに来ます。可愛がっていた子牛を連れて行ってしまう、そしてそれはまた食肉になったのかも知れません。良質な肉を得るために品種改良をくり返し、優秀(?)な牛の卵子は大量に冷凍保存されて新しい生命を育て、そして食料に変わっていくという。そんな生命から食料に変わっていく現場を他人まかせにして、私達は美味しい食肉を享受している。

自然に生きる動物を食す。美味しいだろうと想像はできますが、実際に自分で捕獲する、生命を絶つ、血抜き、解体、そして食料に変わっていく。その中での自身の心のありよう、つらい気持ちなどがつづられていて考えさせられます。こんな料理家の強さや生き方をよく書いてよく伝えているなと思わせられました。

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「風に恋う」

風に恋う「風に恋う」
額賀 澪
文藝春秋

 私にとっては額賀作品の二作目。

今回は高校生の吹奏楽の世界。吹奏楽コンクールで全国大会までいった高校の演奏会を聴いて小学校から吹奏楽をはじめた主人公。中学で夢が叶えられずに燃え尽きたかのような茶園基(もとき)が高校に入学するところから話が始まる。先輩・同級生・コーチとともにまたコンクールを目指す物語。コンクールに絶対的な価値観をおいている、そんな世界を私は知らないのですが、ブラック部活なんて言葉も飛び出して勉強との両立をもテーマに据えた面白いストーリーで一気読みでした。