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「大獄 西郷青嵐賦」

大獄「大獄 西郷青嵐賦」
葉室 麟
文藝春秋

今年はNHK大河ドラマが「西郷どん」、図書館にその原作とこの本が並んでいて、葉室さんが好きな私が選んだのはこちらでした。

明治維新の立役者の一人西郷隆盛の若き頃の物語です。薩摩藩の幕末の名君:島津斉彬が藩主につく前から始まり、藩主となった斉彬に抜擢重用され大活躍。しかし時代の潮流が変わり尊皇派の志士たちに苦難の時代を迎えます。表題は「安政の大獄」からきているのでしょうか。そこからまた夜明けを迎えるまでを描いています。

坂本龍馬については多くの小説・ドラマで多少の知識はあるのですが、西郷については知らずに来てしまいました。ここでは魅力的な人物:西郷像が描かれていて新鮮ですが、「これから・・・・」というところで終わってしまっているなとも思ってしまいます。ゆくゆくはこの後の歴史の表舞台に立つ西郷像も描きたかったのではないでしょうか、好きな作家さんが逝ってしまいました。

「おらおらでひとりいぐも」

おらおらでひとりいぐも

おらおらでひとりいぐも
若竹千佐子
河出書房新社

桃子さんは夫を亡くし、子ども(一男一女)は離れて暮らしているので、今は一人暮らし。孤独の中でも頭の中では弱気・強気・喪失感・自由を得た自分、いろいろな性格の桃子さんが東北弁で話しかけて、それはそれは賑やか。さらには桃子さんのばっちゃんが登場したり子ども時代の桃子さんが登場したり。子どもが独立し伴侶を亡くしたあと老いと孤独の中で生きていく心を実によく語っているのではないでしょうか。

今の時代を象徴しているような今年の芥川賞作品です。

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「アキラとあきら」

アキラとあきら

「アキラとあきら」
池井戸潤
徳間文庫

零細工場の息子:瑛(あきら)と大手海運会社の御曹司:彬(あきら)の物語。父の工場が倒産し新しい地で生活する瑛、父の会社を継ぐことを期待されながら独自の人生を歩み始める彬。二人が顔を合わせるのは銀行という舞台、やっぱりここでも池井戸ワールドです。二人の主人公が歳を追って成長していく姿が並行して描かれ、行員新人研修では融資を申し込む側と審査する側に立ち模擬対決する。そしてやがては本当にその立場となっていく。面白い話の組み立てでした。

昨年文庫で登場したので新しい作品と思いきや、実は10年ほど前に雑誌に連載された長編小説。今人気の池井戸ワールドの先駆け的な作品のようですが、爽やかな主人公二人を描いていて読後もまた爽やかです。

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「生きるぼくら」

生きるぼくら「生きるぼくら」
原田マハ
徳間書店

高校時代にひどいいじめを受け4年間引きこもりを続けた主人公:人生(これは名前です)、その生活を全面的に支えてくれていた母から突き放されて頼りにするのは数通の年賀状。その中の一通の祖母からの年賀状を頼りに信州蓼科へ、そこで祖母と一緒に暮らしはじめる。
「いじめ」、「不登校」、「ひきこもり」、「老い」、「介護」そして「自然濃による米作り」、「人のつながり」、たくさんのテーマが盛り込まれた小説です。

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「樅の木は残った」

樅の木は残った

「樅の木は残った」
山本周五郎
新潮文庫

山本周五郎の有名な長編作品、新潮文庫では上中下の3巻となっています。

伊達騒動で大悪人とされている伊達藩家老:原田甲斐を、幕府の大藩伊達家取り潰しのねらいから免れるために奔走し、そのために極悪人の汚名をかぶったまま死んでいった人として描いた作品。はじめは陰謀をめぐらす伊達兵部に巧みに取り込まれていく、暗く沈んでいくような展開が読んでいて重くつらくなっていくようでしたが、孤独に耐えて武士道を貫いていく姿は読みごたえ十分です。自己を追い詰めていくような主人公に対して、武士を捨て芸の道に生きようとする新八の生き方も対照的でした。

これもおすすめ。

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「だれも知らない小さな国」

だれも知らない小さな国だれも知らない小さな国
佐藤さとる 作
村上 勉 絵
講談社 青い鳥文庫

久しぶりの児童文学、昭和34年出版の作品です。

「ぼく」が小学三年のときから話がはじまります。友だちと一緒に見つけたもちの木の皮は、がき大将のためにあまりもらうことができず一人で山の中にはいる、そこでお気に入りの場所をみつける、なんてストーリーは男の子の冒険的・隠れ家的な心をくすぐります。

そんなお気に入りの場所を、大人になった「ぼく」がここに住む「こぼし様」という小人とともに守ろうとする。開発計画を止めさせるための作戦もまた面白い。さらに夢を共有できる女性も現れてくるあったかいおはなしでした。

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「花のれん」

花のれん花のれん
山崎豊子
新潮文庫

朝ドラ「わろてんか」は吉本興業の女主人がモデルとのこと。その原作というわけではないけれど、同じ吉本興業の女主人をモデルにしたこの小説、読んでみようかなと借りてきました。

大阪の呉服店に嫁いだ多加だが夫は道楽好きで店はつぶれてしまう。実家に借金をして夫とともに場末の寄席を買い取り、夫亡き後は女席主としての道を歩んで行く物語。300ページほどの小説での一代記は小気味よいほど話の流れが速く、あっという間に読み終われそうです。

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「あきない世傳 金と銀」

あきない世傳金と銀あきない世傳 金と銀
高田 郁
角川春樹事務所

今年テレビドラマ化もされた「みおつくし料理帖」でお馴染みの高田郁さんの新シリーズ、既に4冊が出版されていますが、図書館に希望を出したところ入れてくれましたのでまとめて読んでみました。

やはり時代小説で舞台は江戸期でしょうか。主人公の幸(さち)の父は武家で私塾で教える教養派、跡を継ぐ予定の優しい兄もいる幸せな家庭だったが、流行病で兄・父が相次いで逝き母・妹と別れて大阪の反物を扱う商家の女衆として働くことに。女衆は「一生鍋の底を磨いて終わる」と言われる中、商いの世界に才能をみせていく物語です。

女性でありながら男の仕事の世界で才能を開花させていく話は「みおつくし料理帖」とも共通するものがありますね。また、現在放送中の朝ドラにも重なるものがあるかな。

4冊を一気読みでした、シリーズはまだまだ続きそうです。2月、8月と順に出版されてきていますので5冊目は来年2月(?)、待ち遠しい。

「ビブリア古書堂の事件手帖7」

ビブリア古書堂7ビブリア古書堂の事件手帖7
~ 栞子さんと果てない舞台 ~
三上 延
メディアワークス文庫

しばらく遠ざかっているあいだにシリーズ7巻目が登場していました。今年2月に発売になっていたんですね。

シリーズのこれまでは太宰治の古書などを巡って話が進んできましたが、今回はシェークスピアが主役(?)。「人肉質入裁判(じんにくしちいれさいばん)」なんて古書が登場します。猟奇的なこわい雰囲気の書名、でもこれはシェークスピアの「ヴェニスの商人」のことでした。そういえばこの中では主人公の身体の肉何ポンドかが質草(?)になるんでしたね。それから話は発展してファースト・フォリオ(シェークスピアの戯曲を集めた最初の作品集、1623年出版)をめぐるストーリーに。今まで出番の少なかった栞子さんのお母さんも登場して親子対決の様相。と、まあこれくらいにしておきます。

今回でこのシリーズは一区切りなのだとか。でもまた続編も書けそうな余韻も残しています。

知人の息子さんが古書店をはじめたそうです。その方も「このシリーズを読んでいるのかな、現実の古書の業界のありようもこんななのかな。」なんていうことも考えながらのたのしい時間でした。

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「小説日本婦道記」

小説日本婦道記小説日本婦道記
山本周五郎
新潮文庫

周五郎3冊目。
日本の男には武士道とか○○道と数々の生き方の美学のような言葉があるけれど、女性にはそういう言葉が見あたらない。そこで「婦道」という言葉で日本の女性の美しい生き方の描くタイトルにしたとのこと。そんな著者の言葉通り江戸時代を舞台にした女性の物語の短編集です。短編ながらどの話もグッとくるものばかり、こういう話が揃うと短編集もいいなと思います。そして長編もまた読んでみたいな、と・・・・。