通勤途上の車の中で久しぶりに今様(混声合唱)をききました。私たちが分離唱の合唱で唱った録音です。弦を張ったような緊張感のあるユニゾンではじまり、そこからハーモニーに音が広がっていくこの曲は独特のおもむきがあります。平城の盆地に立ち、周囲を見渡すとゆったりとした奈良の山々が春霞の中に見わたせる、花の季節には山肌に桜が咲き誇る、そんな万葉でもうたわれている古代の大和の風景が思い浮かびます。
今となっては時すでに遅いのでしょうが、君が代論議がありました。「君が代が国歌としてふさわしいかどうか」、というものです。君が代で歌われている世界が国歌としてはどうかと疑問があるところですが、ではどうするか。「新しい国歌をつくる」とか、「『さくらさくら』を国歌にする」というい主張もありましたね。そんなことを聞きながらかつて私が思ったのは、「『今様』こそ国歌にどうだろうか」ということでした。曲の優雅さ、日本古謡独特の旋律、古代日本を代表する大和の風景、こんな日本的な要素にあふれた「『今様』こそ国歌にふさわしい」と思ったものです。
はるのやよいの あけぼのに
よものやまべを みわたせば
はなざかりかも しらくもの
かからぬみねこそ なかりけれ
ア・カペラのハーモニーの中で唱うこの曲、印象深いですね。