オペラ「注文の多い料理店」と歌のステージ
という舞台を見に行った。いうまでもなく、「注文の多い料理店」は宮沢賢治の作品である。宮沢賢治の童話はおはなしのストーリーだけでなく、その背後に流れている何かを感じることができ、その世界に非常に魅力を感じる。しかし彼の作品をオペラにしてしまって、その「独特な世界を表現できるのだろうか」という気持ちを抱きながら観にいった。 舞台装置はシンプルで、壁やドアを抽象的に表現したと思われる木製の枠がいくつか並べられ、これを通り抜けては「料理店」の次の間に入っていくのだった。この劇団は西洋的なオペラと言うよりはむしろ日本語のことばがよくわかるようにという意図を持って唱い、演じて活動していることがパンフレットに紹介されていた。たしかに歌の中でもことばがよくわかり、子どもの多い会場で子どもの笑い声がよく聞こえていた。 しかし、初めに述べた賢治独特の世界を表現できたかというと疑問だ。その世界は人の心の中で想像を膨らませて感じることができるものなのかも知れない。それが、おはなしにメロディーがついてしまうことで、簡素な語りから想像を膨らませることができなかったような気がする。演目が賢治作品なら、やはり賢治独特の世界を感じ取りたいものだと思う。