「賢者はベンチで思索する」
近藤史恵
文藝春秋
21歳の七瀬久里子は服飾関係の専門学校を出たが思うような職が得られないままファミリーレストラン「ロンド」でアルバイトをしている。自身の未来や引きこもり気味の弟に漠然とした不安を抱え、帰り道小さな公園で慣れないタバコを吸おうとしていたところを老人に声かけられる。ロンドの常連客で、認知症も疑われるように店が暇なとき決まって窓際に席を取り、持参した数日前の新聞とコーヒー一杯で長時間を過ごす老人:国枝。しかし公園で会う時の老人は別人のようで、久里子の話を聞いてくれるようになっていく。やがて老人の何かしらの一言が久里子の抱えている不安を少しずつ晴らすきっかけとなっていく。久里子と国枝老人の心温まるつながりが心地よいお話。
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