しゃべれどもしゃべれども
佐藤多佳子
新潮文庫
主人公は落語家お今昔亭三つ葉、小三文師匠の内弟子に入って21歳で二つ目昇進、それから5年の26歳です。師匠の弟弟子は時代をつかんだ売れっ子だが、古典落語の名人的な存在のこの師匠に師事して古典落語にこだわっている。でも話すたびに面白くなくなっていくという行き詰まりを感じている。
そんな三つ葉にどもりをもったテニススクールのコーチ、会話が苦手な若い女性、関西から越してきて級友になじめずいじめ(?)を受けている小学生、解説の仕事が思うようにいかない現役を引退したプロ野球選手、と話すことに不安をもっている4人がそれぞれの悩みをなんとか打開しようと三つ葉に落語を習い始める。
主人公の心の動きも面白いし、そのメンバーみんなで小学生を心配している姿にどなんとも温かいものを感じる小説です。4人が覚えるの噺は「饅頭こわい」、これからこの小説を読もうとする人は一度この落語を聴いておいた方がいいかもしれません。