銀二貫
高田 郁
幻冬舎
昨年NHKで放映された同名ドラマの原作です。
銀二貫で買われた敵討ち、助かった武家の少年が寒天問屋の商人として成長していくおはなし。この作品でも作者の料理や食材へのこだわりが物語の中に流れています。繰り返される大坂の大火、寒天づくりの大変さ、新しい糸寒天の産みの苦しみ、そしてまた羊羹の誕生物語でもあるようです。描かれている人たちも人情味いっぱいです。
銀二貫は天満の天神さんに寄進するための大金、大坂商人の天神さんへの信仰の厚さは私たちの想像を超えるもののようです。店の主人が長年かけて蓄えたその大金をここぞと言うときに惜しげもなく投ずる場面が何度か登場します。敵討ちと引き替えに渡された銀二貫もまたその武士の郷里で生かされていました。ドラマでは銀二貫の重さがあまりわからなかったのですが、小説ではこの表題がなるほどとうなずけます。
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