一絃琴に一生を捧げた女性の師弟二代記です。維新の頃、土佐には一絃琴が華やかな時代があったようで、またモデルとなった女性もいるようです。
前半の主人公は苗、芸事にも理解のある武家で育ち不幸な結婚もありましたが、最終的には理解のある伴侶のもとで一絃琴の学校を立派に経営するまでに。後半の主人公は苗の弟子蘭子、才にも財にも恵まれながらも苗には認められず、しかし最終的には一絃琴の第一人者として認められ人間国宝にまで。
こういう女性の一生を描いた作品ではあると思うのですが、著者の描きたい音楽の世界は音楽を通じて名士となる出世の道でしかないように思えてしまいます。もっと音楽で広がる豊かな世界を表現して欲しかったな。
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