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「覇剣 武蔵と柳生兵庫助」

覇剣

「覇剣 武蔵と柳生兵庫助」
鳥羽 亮
祥伝社

 吉岡一門を倒し佐々木小次郎を倒し戦乱の世からそれが治り徳川の世への変わる時流の中で剣名を上げながらも十分な地位と禄を得られない武蔵。柳生の名門に生まれ、容易に肥後細川藩で十分な地位を得ながらもそれを投げだし剣の道を求める柳生兵庫助。壮絶な戦いの中で剣を磨いてきた武蔵と名門の麒麟児で新陰流の神髄である活人剣をつかう兵庫助。二人の剣豪を対比させながら、やがてはこの二人の対決へとすすんでいく。
吉川英治とはまたひと味違う武蔵像を描いています。

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「パンとスープとネコ日和」

パンとスープとネコ日和

「パンとスープとネコ日和」
群ようこ
角川春樹事務所

 編集者として出版社に勤め料理家に気に入られていたアキコだが、突然母を亡くし天涯孤独な身となってしまう。常連さんが集まる食堂を開いていた母の店を閉店。社では不本意な人事もあり、退社して母の残した店を改装し自らの店を開く決意をする。シンプルな内装、メニューは日替わりのサンドイッチ・サラダ・小さなフルーツのみ、安心できる食材を使うこだわりの店。ふらりとやってきたネコのたろとの生活、女性店員しまちゃん、隣の喫茶店のママさん、料理家の先生、縁ある寺の奥さん等々多くの人と関わりながらお店をやっていく物語です。
1作目が好評だったのでしょうか、続編が次々と出て最新刊は5作目。私の読後感も好印象、2作目「福も来た」も読みました。これから続けて読んでみようと思います。

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「ひかりの魔女」


「ひかりの魔女」
さっちゃんの巻
山本甲士
双葉文庫

 「ひかりの魔女」シリーズの3作目です。主人公のさっちゃんは小学校5年生、今は不登校となり「くすのきクラブ」というフリースクールに通っている。スクールでは予定を立てて自分のペースで学習ドリルをすすめ、あいまに小1のひとみちゃんに児童書の読み聞かせをしている。そんな中、スクールのボランティアとしてひかりさんがやってくる。さっちゃんの読み聞かせを聞いてくれ、学習へのアドバイス、料理教室、帰宅途中でのおはなしの創作などなど光さんが来たことでさっちゃんをめぐる色々なことが動き始める。今回もスーパーおばあちゃん:ひかりさんがその人脈を駆使してしあわせを運んでくる温かいおはなしでした。

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「北里大学獣医学部 犬部」


「北里大学獣医学部 犬部」
片野ゆか 作
ほづみりや 絵
ポプラ社

 表題の通り大学のサークルのおはなし。北里大学獣医学部生は青森県十和田市に大学2年生になってやってくる。そんな二度目の入学生(2年生)から始める「犬部」は捨てられた犬や猫を保護して、新しい飼い主を探す活動をしている。犬部にやってくるのは、公園に捨てられた子猫や小犬、病気やケガをした野良猫、栄養失調の迷子犬などなど。なかには人間不信・警戒心のかたまりのような犬まで。そんな犬や猫たちも愛情を注がれ、不信を拭い去って穏やかさを取り戻していく様子は人間と同じですね。大学が支援してくれるわけでもなんでもない犬部の活動はただただ学生達の動物愛に支えられています。こんな学生がいるんだ~。

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「小さな山の家にて」

 

小さな山の家にて

水上 勉
朝日新聞社

 「ぼく」は東京に住む小学生、おじいちゃんが長野の山で一人暮らしをして竹紙(ちくし)を漉いている。長い休みになると「ぼく」はおじいちゃんの「小さな山の家」に行って一緒に竹紙漉きしたり、犬と一緒に山に入ったり、おじいちゃんの仕事を手伝うタイ人の兄妹と働いたりする。

水上さんの「ブンナよ木からおりてこい」以来の児童文学だそうです。水上さんには「越前竹人形」という作品がありました。その中で著者の竹紙に対してのこだわりを感じましたが、ここでもこどもの目を通して竹紙への強い思いを綴っています。山の家での生活の情景が生々しく浮かんできて、できあがった竹紙がやがては国境を越えてタイの人たちとの交流にまで発展していく夢のあるおはなしでした。

「福」に憑かれた男

福に憑かれた男

「福」に憑かれた男
喜多川 泰
総合法令出版

 父親の死で会社勤めを辞めて長船堂書店を継いだ秀三、はじめこそはどうやって店を大きくしようかと夢見ていたが、やがて近くに大型書店が誕生することになり、しかも近くにはコンビニが・・・・。これでは雑誌も売れなくなってしまうというありさま。ちいさなお店がそんな危機を乗り越えていくストーリー。しかもそれを語るのは主人公に憑いた福の神というのが面白い。
で、「そんな本屋さんがあったら良いな」とモデルとなった本屋さんがあるのかなとネットで調べたところあるんですね。こんな店近くにあったら行ってみたいな。実在するこの本屋さんへの著者の思い入れもたっぷり詰まったこの本、一気読みですよ。

「慟哭は聴こえない」

慟哭は聞こえない

「慟哭は聴こえない」
丸山正樹
東京創元社

 「デフ・ヴォイス」シリーズの3作目です。主人公は家族の中でただ一人「聞こえる」人、手話と音声日本語両方を使いこなし手話通訳を仕事としている。本書は4話で構成されており、生命を授かった女性が医療を受けることの困難さや、モデルの男性に対してそのマネージメント・スタッフの期待する姿とのずれ、障害者雇用をしながらその働く環境についての約束を果たさない会社に対して女性が起こした訴訟にかかわることなど、聴力障害の方たちの抱える不合理さに手話通訳としてかかわっていく主人公の姿が描かれています。
第3話では不審死を遂げた人物の身元を調べる中でろう者であったことがわかり、その人物のTVに移ろうとしていた映像記録からその背景を探っていくおはなし。瀬戸内海の小島に残るローカルな手話が登場し、漁師の間で聴力の有無を超えて手話で意思疎通が行われていたその土地の文化にも驚かされました。著者が伝えたいことがこんなところに凝縮されているのかな。

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「デフ・ヴォイス」

デフ・ヴォイス

「デフ・ヴォイス」
丸山正樹
文春文庫

 荒井尚人は両親・兄との4人家族、ろう者(聞こえない人)の中で彼一人がコーダ(聞こえる人)という環境で育った。家族の中での意思疎通は日本手話、そして家族で外に出たときには尚人が通訳を務めてきた。警察職員であった尚人は組織内部の裏金作りに関わせられて内部告発、退職した経歴をもつ。
手話通訳の仕事をとおしてろう者に寄り添う人たちに近づいていく尚人。そんな中でおきる殺人事件に、警察時代に関わったことのあるろう者が容疑者として浮かんでいることを知る。そしてコーダだからこそできる手話通訳者として事件の謎解きが始まる。
警察の取り調べでも裁判の法廷内でも容疑者であるろう者は十分な意思表示や受ける言葉の理解で不利な立場に立たされてきたことを思い知らされます。そしてコーダの人が家族の中でも抱えている孤立感も繊細に表現されていて、聞こえる人聞こえない人の間に存在する様々な障壁や偏見などを見事に描いた作品でした。

「青天を衝け」

青天を衝け3「青天を衝け」
大森美香 昨
豊田美加 ノベライズ
NHK出版

 今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」、名前を知っている程度の渋沢栄一の一生を描いたドラマはなかなか興味深く原作も読んでみようかとおもったのですが、原作はないのですね。でもドラマからノベライズされたこの書を図書館で見つけて読み始めました。ドラマの方が元だけあって、読んでいても好印象のドラマそのもの観があります。俳優さん演じる人物を頭に描きながら読む小説もいいものですよ。

最終4冊目は発売されたかな、続きを読まなければ。

「あかね空」

あかね空「あかね空」
山本一力
文藝春秋

 映画「あかね空」を見て原作を読みたいなと思っていました。

京の豆腐屋で修行をし江戸へ出てきた栄吉が長屋でおふみとともに豆腐屋をはじめて、やがて店を大きくしていき二代目に引き継いでいく物語。源治・おふみ父娘をはじめ長屋の人たちや一人息子を誘拐された豆腐屋の相州屋夫婦の助力など人のつながりの中で商売を太らせていく。栄吉・おふみ夫婦は二男一女に恵まれるが、子の成長に伴い家族に不和も・・・・。

映画にはほとんど登場しなかったと思うのですが、次男の伴侶となる女性の存在もまたいいなと思いました。

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