“悪夢の超特急”リニア中央新幹線
樫田秀樹
旬報社
度々利用している軽食喫茶のお店は室内の棚に多くの本が並べられています。そこでこの本を見つけてどんな内容だろうと手に取り少しだけ開いてみたところ、「どうぞお持ち下さい」と貸していただけることになりました。
リニア中央新幹線・・・・あまり感心を持たない私にとってのそれは夢の技術、夢の鉄道、そんな印象でした。でもこれを読んでいるとそんな夢のような気持ちは吹き飛んでしまいます。掲げられているいくつかの懸念は
・工事による周辺の水涸れ
・掘り出される膨大な量の建設残土の処理
・新幹線の3倍以上の消費電力、それは原発による発電が前提では?
・発生する電磁波の影響
・ウラン鉱床地帯にトンネルを開ける可能性
・膨大な建設費に対する採算性
と多岐にわたります。そうした懸念・疑問に丁寧に答え、不安が払拭されてこそ建設に向けてすすんで行けるものだと思うのですが、現実はそうではないようです。
何よりも驚くのは、こうした疑問にJR東海が答えようとしないこと。「開発ありき」で突き進んでいる巨大プロジェクトのようです。巨大プロジェクトには環境影響評価があって環境的に疑問があればそれについて十分な検討がなされ納得させてすすむものだと思っていました。しかしこの評価制度にも前へ前へと突き進む事業を立ち止まらせる力はないのだと知りました。
しっかりとした議論の下で事業がすすんでいくのなら闇雲に反対するものでもないと思うのですが、周囲の疑問の声に耳を傾けることなく突きすすむ事業主体の様(さま)に驚かされるばかりです。
みなさん、いちど読んでみませんか。
今年8月、この本の増補版が発行されました。
第7章 ストップ・リニア!訴訟
が追加されました。表題の通り「建設中止」を訴えての訴訟が始まったのだそうです。投げかけられた問いに答えようとしなかった事業主体も、裁判となると正面から受け答えしてくれるものと思うのですが、どうでしょうか?
「悪夢の・・・・」続報
と11月14日に紹介した初版の発売直前に発行取りやめとなったことなども、「あとがき」の中に記されています。参考まで。