「よろずや平四郎活人剣(上・下)」
藤沢周平
文春文庫
主人公・神名平四郎は旗本の妾腹の子で冷や飯食い。実家を出て三人で剣道場を開くという話に乗ったが金を持ち逃げされ、裏店に住み着いて始めたのが「喧嘩50文、口論20文、とりもどしもの百文、よろずもめもご仲裁つかまつり候」という商売。食うや食わずの生活この商売に悪戦苦闘し、それでも徐々によろずや家業が板についていく。一話40ページほどの軽いおはなし集で楽しめる。
火鉢の炭を灰の中から掘り起こして暖をとる場面が何度も登場します、友人宅で家族の温かさをちょっと知って帰った時にはこの火鉢の火がとぼれてしまっていて、竈(へっつい)で湯を沸かしながら暖をとったりと一人暮らしのわびしさを絶妙に表現。気の小さい町人の依頼者が来て戸をたたく場面、「風かと疑ったほど小さな音だったが、耳を澄ましていると、またほとほとと戸が鳴った。」の「ほとほと」なんていう擬音語があったかな?藤沢さんの造語かなとも思いながら、でもこんな表現もいいなと思います。私はやっぱり藤沢周平ファン。