私のおもい

このころの練習について、あまりはっきりとした記憶はない。ただ、私の場合は新しい練習方法や先生の音楽の世界に自然にはいっていけた気がする。美しい小曲が次々と歌え、毎週水曜日には先生が東京からみえて指導してくださり、先生の音楽の世界にはいっていられたわけである。なかでも山田耕筰をはじめとする多くの日本的情緒豊かな小曲を感じさせていただいたことが印象的である。ちまたでは某姉妹が日本の小曲や童謡などを歌いもてはやされているが、先生のもとで唱った私たちにとっては何ともひどい歌に聞こえてしまう(比べること自体がまちがいか?)。先生は真の意味で、「日本の心」を伝える音楽家という気がしている。

それから一つはっきりしていることは、私自身が音楽を感じたということだ。私は高校時代も合唱を経験した時期がある。若く頼もしく指導してくれた先生だった。合宿では悲しい曲に気持ちが同化したためか、大部分のメンバーが涙してしまったこともある。演奏会では先生が率先して裏方さんのようなステージの準備をしてくれる姿を見て、感心していた。当時の私にとって、このころの音楽体験には非常に満足であった。ところが佐々木先生の音楽は違った。とにかく直接感性に響いてくる、感じてしまうのだ。音楽を感じてしまう私にとって、これが音楽としかいいようがなかった。楽しい仲間と唱う、みんなで演奏会を成功させる、こういったことで音楽を楽しむことも当然ある。しかし佐々木先生の音楽は、「音楽」そのものを感じるものであった。

私のおもい」への1件のフィードバック

  1. 虚仮

    なるほど。
    音楽そのものを感じる・・・。
    某姉妹の歌がひどく感じる、ってのは、なんとなくわかります。
    山梨大学の合唱団のテープを聴き続けたあとで聞くと、いままで「いいなあ」と思っていた合唱団やプロの演奏家の歌も、ひどく感じたものです。同じようなのですよね。

    返信

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