「バリ山行」のバリはバリエーション・ルートの略。整備されたの登山道に対して、道なき道(バリエーション・ルート)を歩く登山のこと。時には危険を伴う場合もあり得る山行。
主人公:波多は内装リフォームの会社から建物の外装修繕を専門とする会社に転職して2年。前職では人のつながりをあまりもたなかったためにリストラ対象となってしまった。そんな経験から社内行事のような形で開催された六甲登山に参加。その集まりもやがて定例化して社内登山部に発展し、波多は無理のない登山にだんだん魅せられていく。そんな時、同じ営業部の先輩:妻鹿(めが)は同僚とほとんど関わりを持たず独自の営業をしているが、同時にバリ山行に度々出かけていることを知る。近寄りがたい妻鹿ではあるが、仕事上彼に助けられた波多が社の経営方針・営業方針が変わる中でも独自の営業を続ける妻鹿の山行きにも関心を持ち始める。仕事の上ではマイペースの一方、私的にはバリ山行に魅せられている妻鹿の人物描写が面白い。
バリ山行から帰って寝込んでしまった波多への妻の対応が余りにも淡泊、そんな様子を作者もさらっと書いていますね、ウ~~~ン。
本年度の芥川賞作品です。
(103.2k)